2012 Fiscal Year Research-status Report
東洋の伝統をいかした〈生の技法〉の学習と教育に関する比較研究-「食」を手始めに-
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23653245
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
岡部 美香 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80294776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 晶子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10231375)
池田 華子 天理大学, 人間学部, 講師 (20610174)
森 みどり(高松みどり) 滋賀短期大学, その他部局等, 准教授 (20626478)
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Keywords | 歴史的・教育人類学 / 「食」の儀礼 / 葬儀・法要の儀礼 / 世代継承 / 教育メディア / 実践知 / 国際研究者交流 / 韓国・ドイツ |
Research Abstract |
昨年度立ち上げた共同研究組織のなかから実質的に活動可能なメンバーで調査チームを組織し、文献比較調査とフィールド調査とを実施するとともに、調査結果の分析と考察を進めた。調査チームのメンバーは、研究代表者の岡部美香、研究分担者の鈴木晶子のほか、池田華子(天理大学)、森(高松)みどり(H25年4月より滋賀短期大学)、高橋舞(立教大学)、韓炫精(東京大学大学院)である。池田と森(高松)は、H24年11月から研究分担者となっている。 具体的な活動としては、まず、H24年4月~11月にかけて日本・韓国・ドイツそれぞれの文献および先行研究の調査とその比較分析を行い、それらの成果を論文と図書にまとめた(研究発表の項を参照)。 次に、H25年2月9日~13日まで韓国におけるフィールド調査を行った。調査においては、李ハジョン氏(九州大学大学院)と朴宰永氏(釜山大学校・教育発展研究所・研究員)に協力していただき、李氏の家庭における旧正月の儀礼(チャレ)と仏教寺院における旧正月の儀礼(チェサ)と病院の葬儀に関して参与観察とインタビューとを行った。また、2月23日には兵庫県・豊岡におけるフィールド調査を行った。調査においては、松井温子氏に協力していただき、松井家および豊岡地方の葬儀・法要の儀礼についてインタビューを実施した。 これらの調査結果を分析・考察し、その成果を3月20日、21日に京都大学で行われた「卓越した大学院拠点形成支援国際フォーラム 実践知と教育研究の未来」で発表した(研究発表の項を参照)。 以上の研究過程を経て、日本と韓国が近代化の影響などから〈生の技法〉の世代継承に大きな問題を抱えていること、その問題に対峙するには教育メディアに着目する必要のあることが判明し、世代継承のメディアとそこに働く実践知の研究が今後の課題として示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画」の平成23~24年度に挙げていた6つの項目はほぼすべてクリアできている。6つの項目とは、すなわち、1)日本・韓国の若手研究者との共同研究組織の立ち上げ、2)「食」に関する東西の比較思想研究の推進、3)研究会の開催と調査研究の打ち合わせ、4)東アジア教員養成国際コンソーシアムのシンポジウムにおける発表(以上が平成23年度計画)、5)ドイツの研究協力者による1)~4)までの中間成果の検討、6)日本と韓国における参与観察とインタビュー調査(5)と6)が平成24年度計画)である。経費の都合上、訪問が困難なドイツに関する研究については、昨年度の実施状況報告書に記載しているように、鈴木と高松がこれまでの蓄積を生かしつつ、またドイツの研究協力者と連絡を緊密にとりながら進めている。 また、2年にわたる研究の成果を、雑誌論文、図書、学会等発表を通して公にした。今後は、国内のみならず海外に向けて成果を発信していくことが課題であるが、そのための準備もすでに進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に実施した文献研究および日本と韓国におけるフィールド調査研究の結果をさらに詳細に分析・考察し、その成果を国内外の学会で発表する。また、論文にもまとめ、学会等の機関誌や紀要に投稿する。その際、ドイツの研究協力者(ベルリン自由大学・Ch.Wulf氏)と緊密に連絡を取り合いながら分析を進めるとともに、韓国の研究協力者(釜山大学校・安京植氏と釜山大学校・教育発展研究所・朴宰永氏)とは共同シンポジウムを開催する。このように、研究成果を広く世に問うため、国際的な学術交流を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国におけるフィールド調査に同行する予定であった池田が急きょ、体調不良のために参加できなくなり、それにより昨年度の研究費に残額が発生した。だが、調査は他のメンバーや研究協力者によって滞りなく実施され、調査結果の分析と考察には池田も参加し調査チーム全員で実施できているので、特に支障はない。 平成25年度は、上記「今後の研究の推進方策」にも記載したように、研究成果を論文にまとめるとともに、国内外の学会で発表する。学会発表の予定としては、まず、8月13日、14日に韓国で開催される「韓国教育思想研究会」で岡部と森(高松)が発表する。次に、9月14日、15日に日本(東京)で開催される教育思想史学会では、教育メディア研究を専門とする韓国の教育学研究者・安京植氏と朴宰永氏を招へいし、本事業のメンバーと共同でシンポジウム形式の発表を行う。国内外におけるこれらの学会発表のために、渡韓の旅費・海外研究者招へいの旅費と謝金・通訳とテープおこしの謝金が必要となる。また、論文をまとめるのに文献が必要であるため、物品費も計上している。
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