2012 Fiscal Year Research-status Report
学校-保護者間のトラブル解決をめざす対応力育成ワークショップのプログラム開発
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23653246
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60169349)
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Keywords | 保護者対応 / ロールプレイング / エコロジカルマップ / 学校トラブル / ワークショップ |
Research Abstract |
1.学校と保護者の間に生じるトラブルは、近年その発生頻度も程度も激しさを増してきている。そしてこの問題は、大都市部に限定した現象ではなく、農山村部でも人口減少地域でも同様の事象がいくつも生じており、それゆえに学校の教職員の対応力あるいはトラブル解決力が極めて重要なものとなっている。 2.学校現場で活用できるように、学校種類ごとに、また基本編と難しい事例に遭遇した場合の上級者編に分けた計6本のDVD教材を監修作成し、日本経済新聞出版社から発行したものが昨年度末に完成したため、今年度はそれらを実際の研修会の場で活用しながら効果測定を始めたところである。これらのDVDは、基本編、幼・保育園編、小学校編、中学校編、高等学校編、そして「対応が難しいケース編」で構成しているが、ワークショップで主に活用していったのは「対応の難しいケース編」(第6巻)である。この中では、福祉学や家庭看護学の領域で用いられているエコロジカル・マップ(人的社会的環境の見取り図)を使うことを中心にし、解決の方向性や手段が見えにくい実に難しいトラブルの見立て(アセスメント)と、教職員の共同性を活かしながらの方策の立て方(プランニング)を提示している。 3.ワークショップの基本は、①DVDの観賞と若干の解説、②グループ(5~6名程度)に分かれて教材の提示、③エコロジカル・マップの共同作成、④各グループの成果の全体の場での発表と共有、⑤研究代表者からの解説とコメント、を流れとした(90分~120分)。この方法を全国の20か所近くの研修会で実行したが、いまのそれぞれの学校が抱えている現実の課題とも重なっているという意見が明確になり、同時に他の難しいケースにも応用できるという確信を得つつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.ワークショップのプログラム開発の基本ベースとなる教材DVDが、日本経済新聞出版社との共同事業により、すでに完成したことが何よりも大きい。その中身は、当初の研究構想段階で考えていたロール・プレイングとエコロジカル・マップを正確に入れ込んだもので、完成度が高い。 2.次に、かねてから研究代表者のもとには、夏季休業期間を中心として、多数の講演依頼だけでなく「保護者対応の具体的な力量を、学校の教職員全体として身につけたい」という形での、ワークショップ依頼が多数寄せられていて、実際にこの教材を活用したワークショップが20回以上実施できていることにある。しかも、これは研究代表者が勤務する大学近くの関西地方だけでなく、北海道から九州各地に及んでいることから、全国どこでも似たような形での研究成果が蓄積できるものとなっている。 3.この研修の場では、適宜にアンケート調査を実施して、効果測定をおこなうことができているだけでなく、担当する教育センターおよび学校長からも多大の協力が得られていることも大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今年度までは、DVDの第6巻を使い、エコロジカル・マップの作成を中心としたワークショップが中心となってきたが、次年度は第1巻~第5巻の中に収めているロール・プレイングの活用も併せたワークショップ開発に取り組みたいと考える。このためには、相当な研修の時間確保が必要であるが、すでに丸1日研修の依頼を次の個所で受けている。この場では6~8時間の研修が可能で、それを活用しながらプログラム開発の完成度を高めたいと考える。6月11日(熊本市教育委員会)、7月6日(宮崎県教育研修センター)、7月8日(宮崎市教育センター)、8月2日(福井県嶺南教育事務所)、8月9日(愛知県豊橋市教育委員会)、8月12日(仙台市教育センター)、8月23日(岡山県浅口市教育委員会) 2.ロール・プレイングの教材は、相当数作成することができているが、エコロジカル・マップづくりの教材事例は、まだ2つにとどまっているので、多様な保護者対応トラブルを想定して、あと数個の教材事例の開発に取り組みたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.学校-保護者間のトラブルは、あとを絶たないだけでなく、より複雑化しており、解決の難しさを増しつつある。初期対応だけでなく、医療、心理、福祉、法律の知識や技能が必要なだけでなく、クレーム対応という角度からみれば、企業の顧客満足と危機管理から学ぶことは極めて多い。これらの領域の文献を収集し分析していくことで、研究目的の達成を図りたいと考える。 2.同時に、研究成果の発表そのものは、具体的な教職員研修会の場で果されるものと考える。このため、得られた研究成果を数種類の冊子体の形にして配布し、同時にその場でのアンケート調査等を通して、教材等やワークショップの進め方についての評価分析をおこなう。 3.保護者対応のトラブルに、学校の教職員が遭遇する機会が単に多いだけでなく、多様な中身をもっていることが、現代的特徴でもある。教育改革施策が降り注ぎ、学校そのものがオーバーワークになっている現状の中では、過度の負担をかけずに、教職員の共同性を育む中で、トラブル解決の見通しをたてていくことが必要になってくる。この場合の力量形成を、エコロジカル・マップとロール・プレイングに絞って考えていったが、他の別の手法の開発や新たな研修方法を模索する。
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Research Products
(5 results)