2011 Fiscal Year Research-status Report
戦前の台湾文化交流史を背景地とした戦後沖縄児童文化・文学の展開と全体像の解明
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23653256
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
斎木 喜美子 福山市立大学, 教育学部, 教授 (30387633)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 台湾 / 戦後沖縄 / 児童文化・文学 / 川平朝申 / 古藤実冨 / 童話 / 昔話 |
Research Abstract |
本研究の目的は、まず第一に戦後初期の沖縄の児童文化・文学復興を担った人々が、日本統治期の台湾との文化交流をルーツとしていた点に着目し、その実態を調査し明らかにすることにあった。そこで本年度はまず川平朝申(1909-1998)に焦点を当てて、川平の台湾滞在中の活動について、台湾中央図書館台湾分館に保管されている資料を中心に調査した。その結果、以下のような事実が確認された。まず「台湾日日新報」では、彼がラジオ児童劇の脚本や演出に関わっており、児童向けの読み物や挿絵(版画)を投稿していたことが明らかになった。また同館に保管されていた雑誌『台法月報』(台法月報社刊)にも川平の作品が掲載されているとの情報を得たため、同雑誌の確認も行った。その結果、「川平てうほ」、「川平朝申」の名で多数の俳句やエッセイが掲載されていることが確認できた。しかもその数は多数におよび、台湾文壇での予想以上の活躍ぶりが伺われた。これらの資料は複写を取り、今後の研究推進の基礎資料として蓄積することができた。 また本研究の第二の目的は、川平と同時期に台湾に滞在して小学校の教師を務め、その傍ら台湾の新聞や雑誌に童話や昔話を投稿していたという古藤実冨(1906-1961)についても、調査を進めることにあった。残念ながら今回の調査で古藤の足跡を台湾で確認することはできなかった。しかし古藤の遺族より、彼が生前書き溜めていた童話の生原稿が新たに資料提供された。中には雑誌未発表と思われる作品も散見されたため、さらなる確認調査の必要性が課題として見出された。またこれらの作品は、初出誌が確認できた資料とともに一覧表にまとめた。なお、作品の内容研究に関しては中間的な成果をまとめ、今年度の沖縄文化協会研究発表会において「古藤実冨の児童文学」というタイトルで口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画した研究は以下の点で評価できる。1.第一回の台湾での調査を終えることができ、川平朝申の文壇での活動内容を具体的に明らかにし、基礎資料を蓄積できた点。2.古藤実冨の未発表作品も含め、直筆の原稿を入手でき、今後の研究を進めるうえでの基礎資料として蓄積できた点。3.来年度以降に予定していた中間的な研究成果のまとめを今年度に一部実施することができた点。 ただし、八重山刊行の雑誌や新聞の調査については不十分であったため、上記の評価と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画では、以下の点に新たな課題が見出されたため、引き続き解明を目指したい。1.古藤実冨の台湾での児童文化活動や作品投稿の足跡が現時点で辿れなかったため、引き続き調査が必要である。これに関しては、川平朝申のさらなる調査とともに進める必要がある。2.古藤実冨の直筆童話原稿には何度か清書をした形跡があるため、作品の形成過程についての分析を行い、完成稿を確定するとともに初出誌を確認する。3.23年度に実施できなかった八重山での新聞や雑誌の調査を行う。とりわけ戦後に「若い人」を八重山で発行していた喜友名英文について基礎資料を収集したい。 また上記の調査を踏まえた成果については、次年度夏に開催されるアジア児童文学大会、沖縄文化協会研究大会において発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は公務や他の研究課題との調整が十分にできなかったため、台湾での予備調査や八重山での雑誌、新聞調査が十分実施できなかった。その反省を踏まえ、次年度は現地調査を確実に行いたい。 また、次年度予定されているアジア児童文学大会や沖縄文化協会研究発表会において中間的な研究成果発表を行うのに並行して、古藤実冨の遺族、古藤光彦氏への聞き取り調査も実施したい。さらに石島英文の研究を行っている郷土史研究家・三木健氏(元・琉球新報副社長)にも聞き取りを行い、情報収集に努める。そのため、次年度は比較的研究調査のための旅費に重点をおき、研究費を使用する予定である。 その他24年度の予算に関しては当初の研究計画通り、北海道大学付属図書館の新聞データベース、国立国会図書館関西分館、国立国会図書館等での雑誌調査を実施し、喜友名英文や古藤実冨、川平朝申の作品収集と整理を行う。そのためのパソコンソフト購入や複写費、文献購入費などに研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)