2012 Fiscal Year Research-status Report
職員室の職場としての機能と課題に関する教育社会学的研究-学校建築上の配置から-
Project/Area Number |
23653270
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西島 央 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (00311639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 誉章 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40514328)
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Keywords | 職員室 / 高等学校 / 教師 / 学校建築 / 教員組織 / 教育理念 / 複合施設 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度の研究成果をふまえて、職員室のタイプの類型化と、類型の違いによる教師の職務の違いとその問題点を抽出することを目的として、より多様な学校タイプの職員室事例の蒐集を行った。 その目的達成のために、第一に、外国の学校の職員室事例の蒐集を行った。具体的には、イギリスの中等教育段階の学校を5校見学した。前年度の研究成果に基づく仮説は、①同じ中等教育段階の学校でも、学科の違いや上級学校段階への進学状況の違いによって、職員室のあり方が異なる、②職員室の形態によって教師の職務のあり方が異なる、というものであったが、イギリスの事例より見えてきたことは、教育理念や教師に期待される職務の違いが職員室の形態の違いにつながっているという因果関係、つまり②の仮説の因果が逆ではないかというものであった。 第二に、日本でも、前年度に調査を行った公立高校以外の学校の職員室事例の蒐集を行った。具体的には、複合施設型の小学校を3校(うち2校は図書館や公民館など社会教育施設を併設、うち1校は保育所と中学校を併設)、私立高校(いずれも中高一貫校)を3校見学した。これらの事例より見えてきたことは、日本の学校の職員室は、学校段階や設置者の違いにかかわらず、イギリスの職員室に比べれば、ずっと似通った形態をしていることであった。 以上から、実際の職務にあたって職員室の形態の違いが影響を与えることがあるとしても、これまで社会的に共有されてきた教育理念や教師に期待される職務のあり方が職員室の形態に影響を与えているところが大きいのではないかと考察するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学校建築に関する研究は、これまで主に建築学の分野で行われてきていた。その研究においては、例えば、施設の構造、活用方法、生徒・児童の学習環境等について、建築学的な関心だけでなく、心理学的な関心も含めて研究されてきていたが、教師の職場環境という関心で捉えた研究はほとんどなかった。 我々の研究は、他の職業なら当然のように行われている職場環境に関する研究を、教師にもあてはめるという、今までにほとんど取り組まれていないものであった。そのため、職員室をはじめ教師の職場環境に注目した学校建築先行研究事例がほとんどないばかりでなく、職員室に焦点化した学校建築の図面なども先行研究ではほとんどみられないところから研究をスタートした。 そこで、研究の1年目、2年目は、さまざまな事例を収集しながら、職員室の類型化と、類型の違いと職務との関係を量的に捉えられるような仮説を立てていくことを重要な目的として、研究を進めてきた。 2年間の調査を通して、国内だけでなく外国の事例も収集したことにより、最初に立てた仮説とは異なる仮説が成り立つ可能性があることや、どの範囲での共通点や相違点を捉えることが職務との関係を捉える上で意味がある類型になりうるかということが見えてきており、最終年度に予定している量的調査の枠組みが立てられそうな状況にまで研究が進んできたと感じている。それゆえ、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究課題の最終年である。過去2年間の研究成果をふまえて、第一に、高校の学校平面図を収集し、職員室のあり方の類型化を行う。第二に、高校の管理職対象及び教諭対象の質問紙調査を実施し、異なる類型ごとの職員の職務の状況と、管理職と教諭がそれぞれに感じている職務遂行上の課題を明らかにする。ここまでは、本研究課題を応募した段階で想定していた3年目の研究であるが、加えて、前年度の研究成果から見えてきた、日本で社会的に共有されてきた教育理念や教師に期待される職務のあり方について、教育諸学の先行研究から学び、質問紙調査の分析・考察の一助にしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の調査により、地域差よりも設置者や学科の違いにより職員室の携帯が異なる可能性があることなどがわかったため、当初平成24年度に実施するつもりだった国内の地方調査を先送りした。 また、平成24年度の調査により、当初の仮説とはやや異なる仮説を立てて平成25年度の調査に臨む必要があることがわかった。以下に述べるように当初より規模の大きな調査を行う必要があることから、予算を平成25年度に繰り越すこととした。 上記のとおり、大規模な質問紙調査と学校平面図の蒐集を行う予定である。とくに質問紙調査は、学校単位に行うだけでなく、教諭一人一人に対しても行うため、質問紙の返送費用が大きくかかると予想される。また、回収した質問紙の整理作業は、本研究従事者だけでは足りないため、大学院生等の協力を求める予定であり、謝金も一定程度必要である。前年度までで残った研究費と本年度の研究費は、これらの調査の実施費と、収集する学校平面図をまとめた報告書の作成費に使用する予定である。
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