2011 Fiscal Year Research-status Report
「神経教育学」への展開を目指した技術系教科と脳科学の融合
Project/Area Number |
23653282
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
尾崎 久記 茨城大学, 教育学部, 教授 (40092514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹野 英敏 広島工業大学, 情報学部, 教授 (80344828)
勝二 博亮 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30302318)
大谷 忠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80314615)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経教育学 / 技能系教科 / 脳科学 |
Research Abstract |
近年の脳機能計測技術の進展により,脳科学は一般にも広く知られるようになってきた。教育分野でも脳科学データを活かして現代的教育課題の解決を図ることが期待されており,「神経教育学(NeuroEducation)」という新たな領域の開発が展望されている。本研究では,技術科教育の「ものづくり」に注目して,脳科学の視点から二つの機能(運動技能系・実行機能系)を検証することで,脳科学と教科教育との接点を探っていくことを目的としている。 平成23年度においては,「運動技能系」に注目し,「ものづくり」で頻繁に用いられる各種道具の操作を行っている際の脳活動を比較した。具体的には,健常成人を対象として,「げんのう」による打撃作業や「のこぎり」による切断作業を遂行させ,運動の企画から実行に至るまでのダイナミックな脳内過程を近赤外線トポグラフィ装置を用いて検討した。その結果,操作具のいかんに関わらず,腹外側前頭前野や眼窩前頭皮質において脳血流の増加が認められた。さらに,これらの領域では運動のイメージよりも運動の実行時に,運動実行時でも切断面や打撃位置を指定した条件の方がより活性化することが明らかとなった。一方,運動の企画やプログラムに関与するといわれる運動前野では,切断面や打撃位置を指定すると両側で活性化するのに対して,自由に切断および打撃する条件やイメージする条件では運動とは対側の左半球でのみ活性化が認められた。以上の結果から,打撃および切断用手工具の作業では,実際の作業の有無や作業精度の違いによって,前頭前野や運動前野を中心とする脳の領域で活性化に違いが見られることが明らかとなった。 さらに,道具操作の期待感と不器用感に関わる調査研究も実施し,小中学生においてはものづくりへの期待感は小学校高学年から急激に低下し,それに呼応するように不器用感が高まることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画にある「道具操作に関与する脳領域の解明」および「道具操作の期待感と不器用感に関わる調査研究」に関しては,一定の成果を上げることができた。したがって,研究の達成度としては概ね順調であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られたデータに関しては,さらに分析を進め,結果の公表を目指していく。あわせて,道具操作の適用学年の適切性に関して,道具操作場面の動きについて動作解析などから定量的に評価できないか,試行的な調査を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は動作解析プログラムを購入したが,動作解析に必要な高サンプリングな動画が記録できる物品や消耗品などの購入に物品費を計上している。さらに,研究分担者との研究協議や成果発表のための旅費,その他に機器の調整に必要な費用を計上している。繰り越しに関しては,今年度に取得したデータの解析が進まなかった点,機器調整費用が予想よりかからなかった点などから発生しているが,次年度以降に同じ目的で使用することにしている。
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