2011 Fiscal Year Research-status Report
対比的説明モデルとアブダクションに基づく社会科発問分析方法の開発
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23653304
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
兒玉 修 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (60136801)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 社会科 / 発問 / 対比 / アブダクション |
Research Abstract |
本研究の目的は、対比的説明モデルとアブダクションの論理に基づいた社会科発問分析の方法を開発し、その有効性を検証することである。発問の第一義的な機能は、学習者側に疑問を成立させることにある。対比的説明モデル研究の成果によれば、その機能は授業者によって提示される情報とそれと対比される情報(または知識)との関係によって実現するとみなされる。例えば、「なぜQか」という問いは「なぜPではなく、Qか」という対比的な構造において、「事象Aはどのように成立したのか」という問いは「Aの成立の仕方は、それ以外の仕方に対して、何が異なっている(類似している)のか」という構造として分析される。 では、疑問が成立している状態とはどのように説明できるのか。疑問が単に「なにもわからない」状態の成立ではないとすれば、その状態の主たる局面は、学習者側にアブダクションが成立している状態、つまり何らかの暫定的な解釈が成立している状態とみなされるべきではないか。そうであれば、学習者側に成立する疑問の成立は、アブダクションが成立しているか否か、または、どのような内容のアブダクションが成立しているかとして分析できる。しかも、発問によって学習者側に生ずる疑問の強度、つまり、発問の第一義的機能をアブダクションの内容として分析できることになる。 対比的関係を前提にした発問が有効であるのは、そうでない場合と比較して、学習者側にアブダクションが成立しやすく、アブダクションによる暫定的解釈の質と量が異なるからである。アブダクションの論理は、発問の有効性を、学習者が発問によって想起する暫定的解釈の質と量において計測できるような発問分析の方法をもたらしうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
疑問の成立について対比的説明モデル、アブダクションの論理、語用論的説明理論を用いて説明することについては文献調査を通じてほぼ可能となった。しかし、学習側で疑問が成立している状態を心理学的に十分に解明することができなかったために、疑問が成立している状態の一局面としてアブダクションを取り上げざるをえなくなった。また、発問分析が社会科授業分析とどのように連動しているかについての解明作業が遅れたため、本研究における発問分析の方法を社会科授業分析の方法とは切り離して提案せざるをえなくなった。さらに、対比関係の類型化作業が遅れ、発問分析に相応しい実験授業を構成するという作業を平成23年度には具体化できなかった。 しかし、上記の遅延は「対比的説明モデルとアブダクションの論理に基づいた社会科発問分析の方法を開発し、その有効性を検証する」という本研究の目的に対して本質的な変更を迫るほどの問題ではないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、本研究で提案する発問分析に相応しい小中学校での社会科実験授業(対比的関係を明示した授業とそうでない授業)を構成したうえで、宮崎県内の小中学校で実験的に実践し、本研究における発問分析の方法の有効性を、発問の機能と授業者にとっての授業改善の可能性において検証することに集中する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、実験授業を行なうための授業づくり、宮崎県内の小中学校教員との研究打合せ、実験授業の実施、ビデオによる授業収録、収録画像の文字化作業、実験授業の分析、各授業者から提示される発問改善案の分析、本研究の代表者から提示される改善案の提示、研究成果の報告等に予算を使用する計画である。
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