2011 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害教育における発達・認知特性を考慮した新しい教育指導方法の開発
Project/Area Number |
23653312
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮本 信也 筑波大学, 人間系, 教授 (60251005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四日市 章 筑波大学, 人間系, 教授 (20230823)
熊谷 恵子 筑波大学, 人間系, 教授 (10272147)
大六 一志 筑波大学, 人間系, 准教授 (10251323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 認知検査 / WISC / DN-CAS / 国語力 / 読書力 / 教育 |
Research Abstract |
本研究は、聴覚障害児の国語力・読書力と関連する認知特性を検討したものである。 【対象と方法】対象は、聴覚障害特別支援学校小学部1年~6年生の72名(男子30名、女子42名)である。用いた検査は、教研の標準学力検査(国語)と読書力診断検査、WISC-IV、DN-CASである。教示は、原則として音声と文字の組合せで行った。本研究は、筑波大学附属学校教育局研究倫理審査の承認を得ている。 【結果】4つの検査のすべてを実施でき、かつWISC-IVの全検査IQが80以上の児57名(男子23名、女子34名:各学年7~12名)の結果を解析した。国語学力検査では、合計点の偏差値は平均56.9(S.D.8.1)で5段階評価では平均3.3(S.D.0.87)であった。読書力検査では、読書力の偏差値平均は55.3(S.D.9.28)、5段階評価は平均3.5(S,D,1.0)であった。WISC-IVの全検査IQは平均105.4(S.D.13.2)であった。DN-CASの全検査標準特典は平均101.8(S.D.14.3)であった。WISC-IVとDN-CASとも、下位検査において特に有意な特徴は全体としては認められなかった。国語・読書力の結果とWISC-IV・DN-CASの結果の関連をスピアマンの順位相関係数で検討した。国語の合計点の偏差値と特に有意に関連した(p<0.01)認知要因は、WISCの全検査IQと言語理解、DN-CASの全検査標準得点と同時処理であった。同様に、読書力得点の偏差値と特に有意に関連したのは、WISCの全検査IQ、言語理解、知覚推理、処理速度、DN-CASの全検査標準得点、プランニング、同時処理、継次処理であった。逆に、認知特性の方から見ると、国語や読書力の下位項目にも広く有意に関連したのは、WISCの全検査IQと言語理解、DN-CASの全検査標準得点と同時処理であった。 【考察】国語よりも読書力に有意に関連する要因が多いことが判明した。読書力検査ではより長文の文章が出題され、全体を把握する力が求められるので、関連する認知要因も多く認められたのかもしれない。本研究は、認知特性も考慮した新しい聴覚障害教育方法論の開発に大いに貢献できる基礎的知見を示し得たと思われた。
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