2012 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害者におけるコミュニケーションモードと記憶方略との関連性に関する研究
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23653313
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 人間系, 准教授 (80265529)
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Keywords | 聴覚障害 / コミュニケーションモード / 口話優位 / 手話優位 / 口話手話併用 / 記憶方略 / 文字課題 / ドットパターン課題 |
Research Abstract |
昨年度作成した実験材料と音声言語を使用する聴覚障害者と健聴者との研究結果を踏まえ、今年度は、聴覚障害者における多様な使用言語と記憶の際に用いるコード化(coding)に焦点を当て、聴覚障害者の視覚的情報(言語的情報、非言語的情報)の処理方略の特徴を検討した。 対象者の聴覚障害者は特別支援学校と通常学校に在籍する高等部 1〜3 年の生徒 44 名であった。生徒達の主な使用言語により、口話群(9名) 、口話優位群(10名)、手話優位群(15 名)、口話手話併用群 (10 名)の4つの群にわけた。実験課題は、文字材料とドットパターン材料を記憶する1次課題と、1次課題に構音抑制条件、手話抑制条件、視覚抑制条件を負荷した記憶課題である2次課題として構成された。 その結果、手話言語を使用せず、音声言語によるコミュニケーションを行う口話群は、言語的情報を記憶する 際には、音韻ループの働きによって音韻的コード化を行うこと、非言語的情報を記憶する際は、視空間スケッチパッ ドの働きによって視覚的コード化を行うことが示唆された。音声言語とともに手話言語を使用する口話優位群、手話優位群、口話手話併用群では、口話優位群は、言語的情報を処理する際、音韻的コード化とともに、手話的コード化を同時に用いることにより、言語的情報を処理する傾向が示された。また、口話手話併用群や手話優位群のように、手話使用の程度が高くなるにつれて、言語的情報を処理する際、視覚的コードが同時に使用される傾向が確認された。一方、 非言語的情報を処理する際に、3 つの群ともに、視覚抑制 条件でのみ、再生頻度が低下する傾向が示された。つまり、 音声言語と手話言語を同時に使用する聴覚障害群でも、視空間的情報を処理する際、健聴者と同様に、視空間スケッ チパッドの働きにより、視覚的コード化を用いて情報を処理することが明らかになった。
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