2011 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシヴ教育に対応した新しい教科書開発に関する萌芽的研究
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23653315
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
眞城 知己 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00243345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生川 善雄 千葉大学, 教育学部, 教授 (60276863)
太田 正己 千葉大学, 教育学部, 教授 (70213741)
北島 善夫 千葉大学, 教育学部, 教授 (70260479)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / 教科書 / 教師用指導書 / 共同学習 / インクルーシヴ教育 |
Research Abstract |
23年度は、1)教育的ニーズの多様性を包含する授業を展開する際に教師が面した課題の調査と教科書利用の調査、2)検定教科書及び特別支援学校用教科書(☆本)の分析を中心に研究を進めた。 教師を対象にした調査は、小学校及び中学校教師、特別支援学校教師97名を対象に実施した。調査内容は、a.障害のある子どもに教科書を使った指導経験の有無と、共同学習における教科書利用の経験、b.知的障害のある子どもを含む小学校の通常学級で用いる教科書の工夫に対する使い勝手の評価、及びc.教師用指導書が具備すべき要件に関するコンジョイント分析によるニーズ調査から構成した。 調査結果からは、a.通常学校で障害のある子どもに教科書を使った経験のある教師が35.5%、特別支援学校では15.5%、双方ともに使用経験がある教師は5.2%であった。他方、教科書を使った指導経験のない教師は42.3%であった。共同学習で教科書を使わなかった教師は58.8%にも上った。b.教科書の工夫については、単元末に要点が示されていることや家庭学習への視点が盛り込まれていることへの評価が高い一方、デジタル教科書や子どもごとに異なる内容の教科書を用いることについては全体に評価が低かった。通常学校教師と特別支援学校教師の考え方の違いが顕著であったのは、特別支援学校教師が見た目が分かりやすく、図やカラー化された教科書を好むのに対し、通常学校教師はあまりそれを好まないこと、通常学校教師はとりわけ子どもごとに異なる教科書への評価が低いことであった。通常学校教師は基礎・標準・発展の3段階で練習問題が用意されていると能力差に応じた指導がしやすいと考えていることも示された。c.教師用指導書については、どの子どもにどの問題を提示すればよいかの手がかりやグループ学習での配慮事項が示されていることが強く求められていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は、教科書に関わる教師の経験を把握しながら、特に共同学習における利用に耐える教科書開発のための視点を導くとともに、現行の教科書の分析を通して、具体的な工夫の視点を明らかにし、さらに教師用指導書が具備すべき内容の視点を検討することを目的とした。 教師を対象にした調査結果から示された通常学校教師と特別支援学校教師の考え方の違いを念頭におきながら教科書分析の視点を定めて進めているために、当初の予定よりもやや分析に時間を要している。ただし、ここで拙速に進めてしまうと、将来的に耐えうる視点を導くことが難しくなってしまうため、慎重に進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、教師を対象にした追加調査を実施し、結果の信頼性を高めるとともに、教科書分析の結果をふまえて、教科書の工夫点と指導書が具備すべき要点を具体的に示したい。さらに、それを実際に用いた授業実践を通して、インクルーシヴ教育に対応する教科書開発のための新しい視点を提案したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究は以下の3点で構成する。 1)教師を対象にした追加調査 2)教科書分析をふまえた教科書の工夫点の提示と指導書が具備すべき要点の明確化 3)提案された教科書と指導書を用いた検証授業の実施 以上の3点の検討に研究費を使用したいと考えている。
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