2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今野 一宏 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10186869)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 特異点 |
Research Abstract |
本研究の目的は,2次元正規特異点の極小解消空間において,例外集合およびその部分集合にサポートをもつ種々のサイクルに対する鎖連結成分への分解を利用して,特異点の種数(幾何種数,算術種数,基本種数)と,重複度や標準サイクルの自己交点数といった不変量相互の関係を示す基本不等式を得ることである.2次元正規特異点の標準サイクルの自己交点数と幾何種数との間の不等式が確立されれば,特異点の研究に地誌学的な観点を導入でき,これまでになされた種々の研究を総括的に概観することが可能になる.ネーター型不等式は,基本種数が2以上の特異点という広大なクラスに対して,特に有効な研究手段を提供することが期待される.これを念頭に置いて,当該年度では3変数のブリスコーン型多項式で定義される2次元超曲面特異点をはじめとする具体的な特異点に対して,標準サイクルやヤオ・サイクル,極大イデアルサイクルといった例外集合にサポートをもつ種々のサイクルを考え,その鎖連結成分への分解を観察することで特異点の諸性質を解析し,基本種数を固定した際の不等式の形を探った.また,標準サイクルの自己交点数と算術種数の間に成立する基本的な不等式である小山の不等式において下限をとり,基本種数が2の特異点に対して,標準サイクルの鎖連結成分への分解を用いて,幾何種数の上限を評価した.また,その埋込み次元や重複度をある程度満足できる形で記述することにも成功した.ここではヤオ・サイクルの長さが特異点の算術種数を与えている点が重要である.これらの研究成果はそれ自身で有用であるが,次年度以降の研究に対する基礎資料としても有効に活用されることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブリスコーン型の2次元超曲面特異点は基本種数や幾何種数といった数値的不変量の計算が比較的容易な対象である.また,基本種数が2の特異点は,一般型特異点の中でまっさきに研究すべき対象である.これらの基本的かつ重要な特異点に関して一定の成果が挙げられたことは,これからの研究の土台を築くという意味ではほぼ満足できる研究成果である.ただし,これらに関しては得られた以上にシャープな結果が期待されるため,例外集合の位相的な性質を積極的に取り入れるなど,より一層の工夫が必要である.また,計算機プログラムの実装を図るためには,より効率的なアルゴリズムを模索しなければならない.
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Strategy for Future Research Activity |
基本種数を固定して,Brieskorn型特異点より一般のsplice quotient特異点について幾何種数と標準サイクルの自己交点数との間に成立する不等式を見出す.また,奥間の公式に基づいて,楕円型特異点のき幾何種数と楕円列との関係を見直し,例外集合の位相的性質を加味した場合に,求める不等式がどのように変化するかを考察する.これらの研究計画を遂行するためには,各地の特異点論の専門家と問題点を共有し,議論を重ねる必要がある.また,最新の専門書を通じて幅広い知識を身につける.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で必要となる研究費は,本質的に旅費と図書費である.これは次年度においても変わらない.国内・国外の各地で開催される研究集会やセミナーに積極的に参加して,多くの研究者との意見交換を通じて最新の研究資料を収集する.また,研究集会は得られた顕著な成果を発表する場でもある.これらの目的のため,旅費を有効に活用する.最新の書籍を購入し,代数幾何学はもとより,多変数関数論や位相幾何学といった関連諸分野の知識を充実させる.
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Research Products
(2 results)