2012 Fiscal Year Research-status Report
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23654009
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 篤史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314290)
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Keywords | 代数学 / 幾何学 / 数理物理学 / ミラー対称性 |
Research Abstract |
本挑戦的萌芽研究の目的は,dg圏に対する非可換ホッジ理論と平坦構造の函手的構成という,ホモロジー的ミラー対称性の理論における極めて重要な問題の解決に向けての活路を探求することである. 非可換ホッジ構造の原型である通常のホッジ理論およびその周期写像の理論を展開するには,複素ベクトル空間・フィルター・重み・実構造または整数構造・偏極が必要であった.しかしながら,非可換ホッジ理論は,現在のところ,重み・実構造または整数構造・偏極の三構造がいまだ構成されておらず,未完成である. 本年度は,代数閉体上コンパクトで滑らかなカラビ‐ヤウdg圏に対して原始形式を構成することを目指した基礎研究を行ってきた.そして,次のような結果を得た. ホッホシルトコチェインおよびホッホシルトチェインのなすホモトピー微積分代数に対してある種の形式化定理を仮定することにより,原始形式の存在を導くカギとなる,「良い切断」を構成できることを示した.また,さらに「非可換多重ベクトル場」のdg加群と「非可換微分形式」のdg加群の間に同型写像が存在することを仮定することにより,原始形式が構成できることを示した.このことにより,代数閉体上コンパクトで滑らかなカラビ‐ヤウdg圏に対してFrobenius構造が函手的に構成できることになり,ホモロジー的ミラー対称性から古典的ミラー対称性を導くという基本問題に対する,重要な手がかりが得られた. 現在,仮定した内容に証明を与えるべく研究を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非常に困難な課題ながらも,本年度は今後大きく発展が期待できる着想が得られた. また,今年度までに得られた研究成果について,研究集会やセミナーにおいて発表を行った.本研究の内容の一部を記述した図書も出版され,本研究課題に対する成果の公表についても行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
代数閉体上コンパクトで滑らかなdg圏に対するホッホシルトホモロジー群上に非退化で次数付き対称な双線型形式を構成する,という非可換ホッジ構造の偏極の構成の問題については,まだ未解決である.このことに対する基礎研究を継続する.さらに,カラビ‐ヤウdg圏の場合に周期的巡回ホモロジー群上に高次剰余型式を構成する,という目標まで含めて,問題の完全な解決を目指して研究を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本挑戦的萌芽研究の旅費を用いて研究集会・勉強会を開催する.組織委員は研究代表者髙橋篤史および連携研究者入谷寛を含む数名となる予定である.関連分野の著名な数学者を海外より招へいし,当該分野の発展の基礎となるものとしたい.
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Research Products
(4 results)