2012 Fiscal Year Research-status Report
リッチ形式の局所化と漸近的チャウ安定ファノ多様体における反標準因子の存在について
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23654025
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 亮一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20162034)
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Keywords | ケーラーリッチ流 |
Research Abstract |
反標準因子の存在と深い関係にあるのが代数幾何的安定性とケーラー・アインシュタイン計量の存在の同値性である.これは最近 Tian, Chen-Donaldson-Sun によって解決されたが,この結果を一般の偏極に拡張することが次に来る重要な問題である.一般の偏極ではリッチ曲率の下限をもつリーマン多様体の極限の理論が使えなくなる.この困難を克服するアイディアがケーラーリッチ流の変形である.このアイディアはラグランジュ平均曲率流の場合にも定式化されるため,幾何解析に新しい研究領域を切り開くものである.これをハミルトニアンケーラーリッチ流とかハミルトニアンラグランジュ平均曲率流と命名した.ハミルトニアンケーラーリッチ流の自己相似解の存在に対する障害としての二木不変量の定式化の問題を考えた.これは大学院生の高橋良輔君との共同作業になった.関連する問題はケーラーリッチソリトン(KS)の一意性をハミルトニアンケーラーリッチ流の自己相似解(HKS) の一意性に拡張する問題や,因子の補集合に完備スカラーフラットケーラー計量を入れる問題など,複素幾何の大きな問題群が視野に入っている.また,ハミルトニアンケーラーリッチ流はリーマンの範疇にも余調和リッチ流とよぶべきものに拡張できる概念で,この意味での変形リッチ流に対するペレルマン型のエントロピー公式と非局所崩壊定理を証明する問題が複素幾何でも重要になる.同時に,リッチ流をその極限の場合として含む急速拡散方程式という平面上の発展方程式の自己相似解を特徴づけるペレルマン型のエントロピー公式を構成する問題に着手した.これは大学院生の若杉与志夫君との共同作業になった.複素射影空間内の極大トーラス軌道がハミルトン変形のもとで体積最小性をハミルトニアンラグランジュ平均曲率流の応用で示せると予想するが,この予想を micro-local 解析で示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハミルトニアンケーラーリッチ流のアイディアは,偏極代数多様体のK安定性とcscK計量の存在の同値性予想とその周辺の未解決問題(新たな問題も含む)に有望なアプッローチ法になることが確実と思われる.理痛は3つある.(1) 反標準束による偏極の場合にはリッチ曲率の下限のもとでのリーマン多様体の極限を論じる Cheeger-Colding 理論が本質的であったが,スカラー曲率の条件のもとではこのような理論は望めない.(2) ハミルトニアンケーラーリッチ流のアイディアではK安定性は因子の補集合に入る完備sfK計量が因子のcscK計量を定めるための障害として理解されると予想される.(3) 反標準束の場合には多くの重要な場合に因子の補集合における完備rfK計量の存在を証明できる.(1)の困難があるために新規なアイディアが必要だが,ハミルトニアンケーラーリッチ流がそのようなアイディアの有望な候補である.それは(2)のような理解を可能にするからである.現時点では偏極が反標準束の場合には多くの重要な場合に因子の補集合に完備リッチフラットケーラー計量が存在することが示されている.一般の偏極では因子の補集合にスカラーフラット完備ケーラー計量を入れる問題になるが,その解析については研究中であり,現時点ではリッチフラットの場合の解析がかなり有効であることが分かってきたところである.
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Strategy for Future Research Activity |
1. ハミルトニアンケーラーリッチ流の自己相似解の存在に対する障害理論の完成.2. HKSの一意性の証明.3. HKS 存在のもとでのハミルトニアンケーラーリッチ流の収束理論(とくに余調和リッチ流のペレルマン型エントロピー公 式と非局所崩壊定理).4. 因子の補集合における完備sfK計量の存在の証明.5. 反標準因子の場合のK安定性とKE計 量の存在の同値性の別証明.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
8月後半に Wien の Erwin Schl\"odinger Institute で開催される GeoQiuant 研究会のオーガナイザおよび講演者として参加し,複素射影空間内の極大トーラス軌道のハミルトン変形のもとでの体積最小性に関する研究発表を行う.そのほか,各種研究会に参加する予定である.
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Research Products
(7 results)