2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654032
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 佳正 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50172458)
|
Keywords | 特異値計算 / 相対誤差 / 可積分アルゴリズム / 離散可積分系 / 計算数学 |
Research Abstract |
変数の正値性が保証された上2重対角行列の特異値計算法に、Rutishauser-Fernando-Parlettによるdqd法、dqds法、岩崎と研究代表者等によるdLV法、mdLVs法がある。dLV法、mdLVs法によって計算された特異値は一般にdqd法、dqds法による特異値よりも高い相対精度。本研究は、dLV法とmdLVs法研究を出発点に、正値性をもつ数値計算法のクラスを一気に広げ、高い相対精度が保証された数値計算法を実現することを目的とする。平成23年度は、研究代表者の指導学生である永田宗寛氏の協力のもとで以下の成果をあげることができた。 まず、dLV法の漸化式について、前進後退の混合誤差解析と前進誤差解析を行い、計算された特異値に含まれる誤差の見積もりを行い、これら誤差解析の意味での安定性を示した。次に、dLV法の漸化式に含まれる任意パラメータδについての無限大極限を導入して、定義された漸化式をdLV∞変換と名付けた。 dLV∞変換は代数的にはLR変換に一致することから、1反復の計算量はdLV法よりは少なく、dqd法と同程度である。dLV∞変換は浮動小数点数上の計算についての数値安定性をもち、変数の正値性が保たれ、反復計算のもとで特異値に収束することが証明された。さらに、数値実験によって、計算された特異値はdLV法に匹敵する高い相対精度をもつことが検証された。この結果、dLV法の高い相対精度とdqd法の高速性を併せ持つ、新しい特異値計算法が定式化された。 また、正値性と高い相対精度をもつハングリーdLV型変換について、研究協力者の福田亜希子氏、山本有作氏、岩崎雅史氏、石渡恵美子氏等との共同研究を行って、変換の相互関係の解明や原点シフトの導入に関して多数の成果を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変数の正値性が保証された漸化式計算によって高い相対精度をもつ計算アルゴリズムを開発するという研究代表者のビジョンに沿って、dLV法の高い相対精度とdqd法の高速性を併せ持つ、新しい特異値計算法が定式化されたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
多くの離散可積分系は、適切な変数の選択により、超離散極限をとることができる減算のない正値形式に変形できることがわかっている。また、計算アルゴリズムの漸化式のあるものは離散可積分系とみなせることも知られている。減算のない漸化式では桁落ちが起きにくく、丸め誤差程度の誤差を含むものの、高い相対精度をもつ数値解が得られる。そこで、離散可積分系に基づいて定式化された計算アルゴリズムは高い相対精度をもつことが期待される。このビジョンに基づいて、さらに研究を推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
dLV∞変換については数値実験を含む基礎研究、とりわけ、高い相対性を保ったまま高速化することで、実用的な計算アルゴリズムの開発を推進する。ハングリーdLV型変換については、研究成果の公開に力を注ぐ。このため、設備備品、研究打合せ旅費、学会発表旅費、謝金を中心に研究費を使用したい。
|