2011 Fiscal Year Research-status Report
確率場に対する予測理論的新手法の開発とファイナンスへの応用
Project/Area Number |
23654037
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 昭彦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50168431)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 予測理論 / Verblunsky係数 / 有限予測係数 |
Research Abstract |
代表者等によって導入された交代射影定理に基づく予測理論における新手法は、Verblunsky係数の表現定理等の種々の成果をあげている。しかし、これに関する研究代表者らのこれまでの成果は本質的に1次元の場合に限られ、多次元の場合には適用することができなかった。この多次元化の問題は、この分野における最も重要で本質的な問題である。この多次元化の問題に関する最初の鍵となる成果が、本研究により徐々に得られはじめている。すなわち、離散時間の多次元定常過程に対して、代表研究者、笠原雪夫氏およびM. Pourahmadi氏との共同研究により、(1) 多次元定常過程の過去と未来の交わりの解析、(2) 相関数のフーリエ係数である相係数による種々の表現定理、(3) 多次元過程に対するVerblunsky係数の表現定理と漸近挙動、(4) 多次元長期記憶過程に対する有限予測係数の表現定理、などが得られている。これらの結果は、多次元過程に対しては、これまで誰も示すことができなかった結果であり、本研究で開発された手法により初めて得られた成果である。さらに、よく知られているように、定常過程の理論と単位円周上の直交多項式の理論とは表裏一体の関係にあるので、これらの成果は、直交多項式の理論の多次元への拡張に関する成果と見ても興味深い新しい結果を与えている。すなわち、確率論の立場で研究している我々の成果が、純粋に解析学の立場から見ても深い結果となっているということである。本研究課題に関連する内容の講演が、研究代表者等により、研究集会「直交多項式・特殊関数が関わる確率論的諸問題とその周辺」等において行われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
代表者等により導入された予測理論における新手法を多次元に拡張すると言う問題において試金石と考えられていたのが、Verblunsky係数の表現定理および有限予測係数の表現定理などを多次元への拡張する問題である。これらの問題が、笠原雪夫氏および M. Pourahmadi氏と代表者との共同の研究により、重要な場合に実質的に解明することができた。このように、予測理論に新手法を多次元に拡張するという問題が、すでに大きく前に進んだことが、本研究が計画以上に進展していると考える理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、何よりも最初に成すべきことは、代表者、笠原雪夫氏およびM. Pourahmadi氏により得られている多次元化の成果を、理論的に整理し、最適な定式化を見出し、必要な概念や記号を導入し、最終的な、完全な形の(いくつかの)論文にまとめることである。これは、細心の注意をはらって、満足のいく形で成し遂げられるべき仕事である。なぜなら、これらの論文は、この方向の研究の研究としては最初のものであり、出発点となるものであるから、その出来が、その後の研究の進展に仕方に大きく影響を与えると予想されるからである。この作業のあとは、これらの成果の種々の拡張および連続時間の場合を扱う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
代表者と共同研究者の笠原雪夫との研究打ち合わせのために、国内旅費を用いる。また、本研究の成果を国内の研究集会において発表するためにも、国内旅費を用いる。本研究遂行のために必要となる、確率論および解析学等の分野の書籍を購入する。本研究遂行に必要なるトナーカートリッジ等の物品を購入する。
|