2011 Fiscal Year Research-status Report
複雑ネットワークのスペクトル解析と頂点間統計量によるモデル化手法の構築
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23654046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾畑 伸明 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10169360)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ネットワーク / 量子確率 / 量子ウォーク / ランダムグラフ / スペクトル / 局在化 / 有向グラフ / 固有値分布 |
Research Abstract |
本研究の目的は、巨大なグラフ、成長するグラフ、ランダムグラフ、辺に向きや加重など付加構造をもつグラフ(ネットワークと総称)のスペクトル解析を展開する。特に、量子確率的な観点と手法によって新しいアプローチを提案し、ネットワークの背後に非可換的構造を探索する。次いで、ネットワーク上の確率過程に付随した頂点間統計量の漸近挙動を解明し、ネットワークの構造を推定するモデル化手法(逆問題)を確立することにある。今年度の実績として次の3つが著しい。1.有向グラフのスペクトル解析:有向グラフのマンハッタン積を一般的に定式化し、ゼロ固有値に付随する固有空間が大きな次元をもつことを見出した。パスグラフのマンハッタン積に関して、因子の個数が小さいときには固有値分布を完全に決定し、パスが長くなるときの漸近的スペクトルを導出した。因子数が少し大きいときには、数値計算によって、固有値が複素平面に特殊な曲線を描くことが確認できた。この曲線を決定することはきわめて興味深い課題となった。さらに、マンハッタン積を量子確率論の独立性と関連させる方向で研究を進めている。2.量子ウォークの統計的性質、特に局在化:研究協力者の今野(横国大)、瀬川(東大)との議論から、古典的なマルコフ連鎖とは性質が著しく異なる量子ウォークをネットワーク上で考えることで、古典論では反映しないネットワーク構造を捕まえる可能性が出てきた。具体例として、スパイダーネット上のグローバー・ウォークを取り上げ、ランダムウォークのスペクトル解析を援用して、数種類の局在化のパターンを見出した。3.距離kグラフのスペクトル解析:具体例として超立方体の距離kグラフの固有値分布を完全に決定し、因子の個数が無限大になる極限分布を具体的に導出した。これを一般のグラフの直積の場合に拡張して、同様の結果を得るための条件について一定のめどが立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.有向グラフのマンハッタン積について、具体例の計算をとおして多くの興味深い現象を発見した。当初の予想以上に豊富な内容が示唆される。特に、パスグラフのマンハッタン積に関して、固有値分布を完全に決定することが目下の最大の目標である。数値計算によって示唆される、固有値が複素平面上に描く図形の正体を解析的に表示するという新しい興味深い問題が現れてきている。2.ネットワーク上の確率過程は2年目以降の課題であったが、研究協力者との議論が発展して、量子ウォークがクローズアップされた。スパイダーネットに限らず、より一般のネットワークに対して、局在性を課題とし、できるだけ統一的な取り扱いを図ることで大きな発展が見込める。さらに、量子グラフの専門家との議論から、双方の知識を総合して大きな発展が期待されることになった。3.当初、計画していた閾値グラフとランダム・グラフに関する解析は、既存の成果を見直すにとどまっており、次年度以降に本格的に取り組むこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続いて、マンハッタン積のスペクトル解析と量子ウォークの確率解析に取り組む。これと並行して、頂点間統計量の確率解析とスペクトル・モデルの構成に取り組む。さまざまな複雑ネットワークに対して蓄積されたスペクトル解析の結果を利用しながら、ネットワークに付随する確率過程(ランダム・ウォーク、パーコレーション、接触過程、長時間相関をもつ多重マルコフ過程など)から得られる頂点間統計量を統一的に扱う仕組みを構築する。特に、連携研究者の今野氏の研究グループの手法や成果を直接利用できるような研究体制を組む。これに量子確率論を組み合わせることで、多様なアプローチを確保し、スペクトル・モデルの構成問題に挑戦する。これまで成功している量子確率論的手法では1 変数直交多項式が中心的役割を果たしてきたといえる。上記の研究を通して、多変数直交多項式を取り込み、量子確率論的手法をさらに拡張することも視野に入る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費(成果発表(海外)1回、研究打ち合わせ2回程度)に50万円、図書・計算機関係消耗品に20万円、その他10万円を予定している。
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Research Products
(10 results)