2011 Fiscal Year Research-status Report
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23654047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 清臣 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (60107688)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | cyclide / circle / differential equations / fifth order / surface / non-linear / Blum cyclide / system of equations |
Research Abstract |
3次元空間内の曲面で2種類以上の円の族を含む曲面としてトーラスやブラムの曲面が知られていたがこれらはすべてサイクリッドと呼ばれる4次の多項式で記述される代数曲面であった.問題はサイクリッド以外にこのような性質を持つ曲面が存在するかどうかであった.本研究実施前に既にそのような曲面を記述する非線形の5階偏微分方程式系を得ていたが今年度最初にはこの方程式系が実際に曲面を記述するための必要十分条件であることが証明できた.これは特に主役となる,ある非線形偏微分作用素の間に一種の可積分性があることが発見できた事による.また,5階偏微分方程式系の詳しい形をなるべく整理された形(A4で50行程度に短縮できた)で導出し,正しいことが検算できるコンピュータープログラム作成にも成功した.主論文提出後にはこのプログラムはウェッブで公開する予定である.続いてブラムの曲面のような6円の族を含む曲面を記述する方程式系,6連立非線形5階偏微分方程式系を調べ,任意の初期値に対し解が存在することを期待した.まず特定の数値を入れて解の級数表示を求めようとしたところ,既に6階微分係数を求める段階で2とおりの求め方に対し答えがあわない非整合性が発生した.これは計算方法が間違っていたのではなく,任意の初期値に対しては解が存在しないことを示した.別の言葉でいえばこの6連立方程式系は非可積分系であることがわかった.これは初期の予想に大きく反するものであったがこの結果により研究の方向を変え,6種の円の族を含む曲面は(若干初期値に条件がついているが)ブラムのサイクリッドに等角同値である事が示せた.すなわちそのような曲面は(一般)サイクリッドになってしまうことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではサイクリッド以外の多種の円の族を含む曲面の存在を,コンピュータプログラムによる数式処理によって偏微分方程式系の可積分を示すことにより達成する予定であった.しかしそもそも6種の円の族では逆に非可積分であることが示せ,結局そのような曲面はサイクリッドになってしまうことがほぼ証明できた事による.従って興味の対象はより少ない円の族を含む場合,特に2円の族を含む場合になることが早い段階でわかったことは有意義であった.また得られた5階偏微分方程式の記述は大変長いので例の計算をするにも数式処理が欠かせないがそれを処理するのに適した計算法とプログラムが確立できたことは大きな進展であった.実際ある種の6連立6元一次方程式系が大きな役割を果たすが安易なプログラムで解を求めようとしても1週間かかっても求められなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2011年11月頃ネット検索によりサウジアラビアのM. Skopenkov教授らが同様の研究をしていることがわかりそのプレプリントからサイクリッドでない,2種の円の族を含む代数曲面の存在がわかった.かれらは主に代数幾何的な方法で研究していてしていて4種以上の円の連続族を含む種数が1以下の閉曲面はサイクリッドであることを示した.これは竹内による基本群を使う方法を発展させたものであるが種数の制限や閉曲面であることから我々の主定理の1つが完全に含まれる訳ではない.しかしやはり今後は3種または2種だけの円の族を含む場合に興味の対象が集中する事に変わりはない.他方最近,2種の円の族を含む場合,あるアイデアによって偏微分方程式系が常微分方程式系に帰着できる事がわかった.ただし計算は非常に複雑になるのでその形を具体的に得るにはいたっていない.しかしこの方法を進めれば問題の完全解決につながる可能性が大きいので現在計算の準備中である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の推進方策で述べたように偏微分方程式系を常微分方程式系に帰着する計算には最終的に大規模な数式処理が必要となる可能性が大きい.その場合には2011年度に得られた長大な5階偏微分方程式系を土台にして数値実験や数式処理をおこなう必要がある.この点は初期の計画どおり,より高速のパソコンや処理プログラムソフトが必要となる.またそのようなプログラム方法に熟練した近畿大学の青木教授,北大の本多教授,などと研究打ち合わせを行うため出張することが必要となる.またサウジアラビアのSkopenkov教授とも連絡をとってこの問題に関して研究打ち合わせのための海外出張を行う必要がある.
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