2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654049
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉本 充 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60196756)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 相空間解析 / フーリエ積分作用素 / モジュレーション空間 / 時空間評価式 / 分散型方程式 |
Research Abstract |
偏微分方程式論の研究において、相空間上で議論を展開することにより解の性質に関する情報を引き出す方法論(相空間解析)は、解析力学の登場以来古くから用いられている手法のひとつである。この研究は、特に解の定量的な情報(Lp-型評価など)を相空間解析により導き出すための、包括的で新しい方法論を構築することを目指すものである。さらに、この方法論を非線形問題などの偏微分方程式の諸問題に応用し、「比較原理」「フロー法」などの評価式導出の際の新しいアイデアも取り込みながら、変数係数の場合など方程式の一般化へのブレークスルーの可能性をも探るものである。本年度は、まずは研究の基本的部分とでもいうべきモジュレーション空間に関する基本的性質の解明に取り組み、以下の様な成果を得た: 1.モジュレーション空間とソボレフ空間との間における包含関係の決定 2.モジュレーション空間上で非線形作用が閉じるための十分条件の導出 3.モジュレーション空間上で正準変換が閉じるための十分条件の導出また、これらの研究成果を"From Abstract to Computational Harmonic Analysis", Strobl, Austria (June 13-19, 2011)、"ISAAC 2011 Congress", Moscow, Russia (August 22-27, 2011)、"2011 NCTS Taiwan-Japan Joint Workshop on PDEs and Geometric Analysis"Hsinchu, Taiwan (December 19- 21, 2011) などの国際研究集会に招待された際に口頭発表をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、まずはモジュレーション空間に関する基本課題の解決に取り組み、さらにはその成果を用いて定量的な相空間解析を行うことにより、分散型方程式に関する応用課題の遂行をめざすものであるが、本年度はこのうちモジュレーション空間に関する基本課題において所定の成果を収めることができた。まだ未解決な部分も残されているが、少なくともこれにより次年度以降に取り組む予定である定量的な相空間解析のための基礎付けができたと考えている。また応用課題として、シュレディンガー方程式の時空間評価式(特に平滑化評価式)に関する研究にも着手したが、その最良定数決定問題においてかなりの研究の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
正準変換がモジュレーション空間上で閉じているかに関しては、本年度の研究により、大域的な変換としては(一次変換以外は)否定的であることが判明したが、錐上の斉次な変換についてはその成否は依然として不明である。定量的な相空間解析への応用上はこの特殊な場合における結果があれば十分であるので、まずはその解明を目指したい。さらに、モジュレーション空間上で非線形作用が閉じるための十分条件に関しても、非線形問題などへの応用を考える上ではまだまだ研究を深める必要がある。これに関しても何らかの進展を目指したい。さらに同じ問題を、モジュレーション空間の類似物であるウィーナー・アマルガム空間においても考察したい。また、今年度において進展が見られたシュレディンガー方程式の平滑化評価式の最良定数決定問題に関する成果をさらに推し進め、その幾何学的な定式化を探ることにより、より深い理解に努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、本研究による研究成果の公表および関連する海外の研究者との意見交換を目的として、ウズベキスタンのタシケントにおいて国際研究集会を開催することを計画していたが、地元の協力者が急病となり実現には至らなかった。そのために予定していた経費は次年度への繰り越しとし、代替地としてヘルシンキでの開催を計画している。
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