2013 Fiscal Year Research-status Report
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23654049
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉本 充 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60196756)
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Keywords | 相空間解析 / フーリエ積分作用素 / モジュレーション空間 / 時空間評価式 / 分散型方程式 / シュレディンガー方程式 |
Research Abstract |
この研究は、特に解の定量的な情報(Lp-型評価など)を相空間解析により導き出すための、包括的で新しい方法論を構築することを目指すものである。さらに、この方法論を非線形問題などの偏微分方程式の諸問題に応用し、変数係数の場合など方程式の一般化へのブレークスルーの可能性をも探るものである。今年度は、「1.フーリエ積分作用素の大域的な Lp-有界性の理論の構築」「2.スペクトル論的比較原理の確立とその応用」「3.分散型方程式に対する臨界型平滑化評価式における最良定数の決定」「4.Wiener amalgam 空間とソボレフ空間との間における包含関係の決定」「5.Modulation 空間の理論を用いた非線型方程式の研究」に関して進展があった.1に関しては、双曲型方程式の初期値問題において、これまで解の大域的な Lp-評価式は定係数の方程式の場合にのみ知られていたが、今回の研究成果により、一般の変数係数の場合も考察できるようになった。2に関しては、以前 Ruzhansky 氏との共同研究により、定係数分散型方程式の平滑化評価式に対する比較原理を見い出していたが、これを変数係数やポテンシャル項を持った場合、さらには一般領域の場合にまで拡張した。3に関しては、昨年度はシュレディンガー方程式に対する様々なタイプの平滑化評価式の最良定数を決定してきたが、依然として未知のままとなっているケースも残されており、今年度はそのいくつかに対して解答を与えることができた。また副産物として、ある種の制限定理における最良定数を実現する関数も決定した。4に関しては今年度新しい着想があり、完全解決へと大きく近づくことができた。5は、hyperbolic-hyperbolic 型の Devey-Stewartson 方程式の初期値問題を modulation 空間において考察したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的なプランの中核として、まずはモジュレーション空間に関する基本課題の解決に取り組み、さらにはその成果を用いて定量的な相空間解析を行うことにより、分散型方程式に関する応用課題の遂行をめざすという方法が当初予定されていた。基本課題に関してこれまで解決されたことは、モジュレーション空間とソボレフ空間との間における包含関係の決定であり、応用課題としては Devey-Stewartson 方程式の特異初期値に対する時間大域的存在の証明などがあげられる。それなりに順調に研究が進行してものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
モジュレーション空間に関する基本課題としては、(錐上の斉次な)正準変換がモジュレーション空間上で閉じているか?モジュレーション空間上で非線形作用が閉じているか?といった基本的な問題が依然として未解決である。これらは、定量的な相空間解析あるいは非線型問題への応用上それぞれ重要な課題であり、引き続き取り組んで行きたい。また応用課題としては、分散型方程式における Carleman 評価式の導出とその解の一意接続性に関する研究が手つかずのままとなっており、こちらも今後における課題としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者と海外共同研究者であるMichael Ruzhanskyとが組織委員となり、各年度にフーリエ解析と偏微分方程式論に関する国際研究集会を開催したが、平成25年度に開催したスペインのバルセロナでの研究集会は CRM および ISACC の企画の一つとして開催されることとなり、両組織から資金援助も得られることとなったため、当初予定からの未使用額が発生した。 Michael Ruzhanskyとの国際研究集会シリーズは、平成26年度には東京での開催を予定している.今回の未使用額はそのための資金の一部に当て、より多くの海外研究者を招聘し充実した集会となることを目指したい。
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