2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654050
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅田 亨 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00176728)
|
Keywords | 五角数定理 / 超幾何函数 / 表現論 / 不変式論 / q-analogue |
Research Abstract |
五角数定理とその一般化は,無限サイズの行列の組から得られる.その組は殆ど共軛という関係で結ばれており,その差分関係式(五角数方程式)を満たす行列のトレースの差にアノマリーが生じて,非自明な関係式が得られるのである.この五角数方程式の解を具体的に書くことに関係して,基本対称式の特殊化である第一種 Stirling 数,及び,完全斉次対称式の特殊化である第二種 Stirling 数が研究の対象に現れる.特に後者に於いては特殊化についての結果は自明ではなく,これを扱う手法が,五角数方程式の解の具体的表示に関わる.それは,一般のパラメータ列を,あたかも特殊な数列であるかの如く扱う手法である.これによって,一見対称式ではないものの対称性が明らかになり,場の理論などに現れる対称式(Macdonald 多項式)の由来にも寄与する. また,有限アーベル群の基本定理の表現論的証明にかかわる手法の分析から,場の理論の第二量子化やアデールの概念の雛形が明らかになり,Bose-Fermi 対応や佐藤のソリトン理論と結びつく.ここに現れるアノマリーは真空偏極に由来するが,留数の概念とも直接結びつく.この二つのアノマリーの関係は,たとえば P. Dirac の『ヒルベルト空間におけるスピノル』で示唆されているが,数学的に解明されているわけではない.本研究は,この関係を,より広い視点から解析し,超幾何函数などの特殊函数がここに現れる機序を,この枠組みのなかで明らかにすることを目的とする.表現論的道具立てとして,加群を標準的なトーラス類似物(典型的には商体を整数環で割ったもの;非可換でも構わない)への準同型から,核函数の相関函数的表示を得ることが判った.さらに,無限テンソル積,誘導表現の一般化,そしてブール環の表現に関わる具体的な計算が,この目的に寄与することを突き止めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に述べた目的のために開発した道具立てを,さらに整備しつつあるが,まだ完全な段階には至っていない.しかし,Capelli 恒等式に関係した伊藤代数の無限テンソル積表現や,誘導表現の一般化と相互法則の扱い,更には,Poincare-Birkhoff-Witt の定理の群論的証明,sl_2 の三項定理,など非可換量を扱う手法を整備してきたので,場の量を扱い,アノマリーを取り出すのに有力な手がかりを得た.Boole 環の表現に関わるものから自然に出てくる超幾何級数は,Hall 多項式の特殊なものをその q-analogue としてもち,さらにこれらが非可換量の正規化からも生ずるなどの事実に注目すると,目的を解決する正しい方向に向かっていることを示唆していると思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の研究状況から判るように,我々の目的であるアノマリーの解釈と解明,及び,その具体的表示が,最大のポイントであるが,場の理論的解釈として有名な佐藤理論(無限次元グラスマン多様体による定式化)など確立された手法がある.連携研究者の野海は佐藤理論の専門家であるが,それに対し,Capelli型恒等式の扱いのために最近連携研究者伊藤によって開発された「伊藤代数」は,無限テンソル積実現を通じて,この佐藤理論の枠組みを広げるものとして期待されている.ここには非可換留数のようなものも取り込め,アノマリーの解釈としえ自然な定式化が得られる可能性が高い.これらを明確化することで,表現論・不変式論による統一的パースペクティヴを得るという「挑戦的」研究の実現を目指す.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今までに得た結果をもとに,連携研究者である野海正俊氏,伊藤稔氏と研究連絡をする.さらにこれに関して,何人かの研究者とミニワークショップを開き,議論を深める.金額的には難しいかもしれないが,可能であれば,海外からの研究者にも参加してもらう. 物理学の論文と,歴史的ではあるが未だに価値が高く現在的意味をもつ Euler, Capelli, Boole, Wronski などの論文を掘り起こし,現代的観点から見直すなどの文献的調査も行う.
|
Research Products
(7 results)