2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形シュレーディンガー方程式の解の爆発時間を越えての延長可能性
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23654052
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
名和 範人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90218066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (50334917)
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Keywords | 非線形シュレーディンガー方程式 / 解の爆発 / 等高面 / 曲線の運動 / ネルソン拡散過程 / クリスタライン |
Research Abstract |
非線形シュレーディンガー方程式の爆発解の爆発時刻を越えて解を延長する方法を,解の背後にあるネルソン拡散過程と解の絶対値の自乗の等高面を記述すると考えられる方程式を利用して従来の方法とは異なる観点から数学的に定式化するこを目標としている. 特異点へ向かう拡散過程の経路の一つ一つの振る舞いは,拡散過程の移流項に注目すると,いくつかの場合に分けて考えれば良いことが分かった.その中の一つの場合がかなり難しく,実際に有為の確率で起こりうるかどうかは未解決の課題であり,それを等高面の運動を記述する方程式を用いて解析しようと試みている途中であるが,拡散過程のサンプルの経路の振る舞いと決定論的な等位面の運動との関係を結びつけるような厳密な数学的なツールが見いだせないでいる.しかしながら,拡散過程の経路の振る舞いを詳細に分類することにより,爆発スピードの普遍性(爆発の loglog 法則)の解明に関しては前進があった. 等高面の運動を表す幾何学的な運動方程式は,クリスタライン運動との類似性が高いと考えられる.そこで平成24年度から,その分野の専門家である石渡哲哉准教授(芝浦工大)を分担者に加えて,曲線の運動論での方法論や数値解析的手法を導入して解析を進めることとした.非線形シュレーディンガー方程式への直接的な応用はまだ出来ていないが,クリスタラインの数値計算手法には進展が見られた.その際に,通常は線分の集まりとして曲線を近似する手法がとられるが,それを点の集合のように考える「双対法」の開発が近年著しいことが分かり,「双対法」の周辺手法の本研究課題へ有効性が認識されたところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
具体的な解の爆発時刻を越えての接続方法としては, レーザービームの自己集束のモデルとして納得できるような2つのシナリオを考えてきた:特異点を捨てて肩の部分の時間発展を継続させる方法;一度出来た特異点が解消されて,全体として再び時間発展が継続される方法.一つ目の方法は有力そうだが,物理的に期待される幾何光学的な経路とは違う光跡が得られる例があり,あまりに手で入れた感が強いように思われる.二つ目は特異点の解消のメカニズムを数学的な合理性をもって記述する事が難しいが,爆発スピードの評価ができて,一般の爆発解に対して loglog 法則が確立されると一挙に進む可能性があるが,これは当該分野の難問のひとつでもある. 我々は,解の絶対値の自乗の等高面ではなく,それに含まれる点の運動を記述する方程式を解析しようと試みて来たが,等高面自体の運動を記述する幾何学的運動方程式を見い出せずにいた.しかしながら,近年,クリスタラインやカーブショートニングの解析で,曲線を線分の集まりとして近似する従来の手法とは違い,点の集まりとして見る「双対法」と呼ばれる手法の開発が著しい事がわかり,この手法のアイデアを用いれば,等高面内の点の運動方程式ら等高面を再構成することが,少なくとも空間2次元の場合は可能であるように思われるが,さらに時間が必要であろう. 方程式の背後にあるネルソン拡散過程の経路の振る舞いの分類は進み,予想されている解の爆発スピードの普遍性の決定には近づいたように思われる.このような見本路の性質をより深く解析するためには,特異点の生成の様子をさらに詳しくする必要がある.特異点の近傍の等高面は円(空間2次元の場合)に漸近するであろうと予想されているが,この際に,上述したような「双対法」が有効であるかどうか確認を行って行く.今後は.よりいっそう数値的な検証が必要になると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,直感的および発見的な考察の下で予想される結論の正否を判断するための数値的な検証法の推進を図ろうと考えている.レーザービームの自己集束モデルとしては空間2次元の解析が重要であり,この場合は解の等高面は曲線になるのでクリスタライン運動で培われた解析手法が有効であろうと予想される.近年になって発展著しい「双対法」による曲線運動の解析は,新しい方法論をもたらしてくれる可能性が大きい: 昨年度に分担者に加わった石渡准教授に加えて,申請者の異動先の同僚となった矢崎茂俊准教授(明治大学)はクリスタライン運動のような曲線の運動やその「双対法」の専門家でもある.彼らとの議論からは,曲線運動論的な新たな知見がもたらされる事が期待されだけではなく,数値的な検証も押し進める事ができるようになると思われる. ネルソン拡散過程の応用を考えるにあたっては,爆発解だけではなく時間大域解で漸近自由な解に漸近する場合も考察する事により,解と確率過程の関係をより深く知ることができると考えられる.特異点解消後の解の接続という観点からは解の位相部分の情報が重要であると考えられるのだが,漸近自由解の場合の方が拡散過程との関連性も捉えやすいように思われるので,そこからヒントが得られる可能性がある.特に,特異点以外の場所における接続問題には直接的に応用できる可能性があると思われる.このような漸近自由解の理論(散乱理論)の研究にはすでに着手しており,この理論への拡散過程の応用を視野に入れている. 具体的な解の爆発時刻を越えての接続方法としては, 二つのシナリオのうち,一度出来た特異点が解消されて再び時間発展が継続されるとするものが有力であるが,爆発解を爆発しない解で近似する,申請者が1991年当時に考えた方法(RIMS 講究録755)の整備を検討中である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は,解の等高面を見ようとしているため幾何学的な問題意識が重要視されるが,それは古典的な意味での幾何学対象よりも広い意味で考える必要があるかもしれない.そのため国内外の当該分野やその周辺分野の研究者を招聘してのセミナーやワークショップを企画するなどして,知見の交換や議論の場を多くする.海外研究協力者である G. Fibich 教授(Tel Aviv大学),分担者である石渡哲哉准教授,それと曲線の幾何学的な運動の研究者である矢崎茂俊准教授(明治大学)らとの議論の機会を設けようと考えている.曲面の運動の解析には幾何学的測度論が重要性が指摘されているので,それらの文献の整備や研究者の招聘を考えている. 申請者の目指している方法の数学化は容易ではないように見えるが,ネルソン拡散過程や解の等高面に注目することは,爆発解に対して直感的な描像をもたらしてくれる.現在のところ,それらを利用した直感的/発見的な議論で予想される結果の正否の確認には数値的検証のみが有効であり爆発解のような特異性が生じる場合の数値計算は困難を伴う.そのためのソフトウェアなどの購入などの計算機周りの環境の整備や,場合によっては,数値計算の効率化のために新しい計算機を導入することも考えている.
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