2013 Fiscal Year Research-status Report
非線形シュレーディンガー方程式の解の爆発時間を越えての延長可能性
Project/Area Number |
23654052
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
名和 範人 明治大学, 理工学部, 教授 (90218066)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (50334917)
|
Keywords | 非線形シュレーディンガー方程式 / 爆発解 / 等高面 / 曲線の運動 / クリスタライン / ネルソン拡散過程 |
Research Abstract |
レーザービームの自己集束の良く知られたモデル方程式の一つは,擬共型不変な非線形シュレーディンガー方程式である.その爆発解がビームの集束を記述しているが,その爆発解を爆発時刻を越えて解を延長することは数学的にも物理学的にも興味深いテーマである.その解の延長方法を,解の背後にあるネルソン拡散過程と解の絶対値の自乗の等高面を記述すると考えられる方程式を利用して,従来の方法とは異なる観点から数学的に定式化するこを目標としている. 擬共型不変な非線形シュレーディンガー方程式の爆発解の背後にあるネルソン拡散過程を考える.この際,特異点へ向かう拡散過程の経路の一つ一つの振る舞いは,かなり複雑そうに見えるが,爆発時間へ向かう任意の時間列に沿って観察すると,意外と簡単な挙動を示す.この際,ブラウン運動の tail event に注目するので,爆発解の極限形状に寄っては,時間列に依ることなく爆発スピードの評価ができるのではないかと考えている.しかしながら,拡散過程のサンプルの経路の振る舞いと決定論的な等高面の運動との関係を結びつけるような厳密な数学的なツールが未だ見い出せていない. 等高面の運動を表す幾何学的な運動方程式は,クリスタライン運動との類似性が高いと考えられ,平成24年度から,その分野の専門家である石渡哲哉准教授(芝浦工大)を分担者に加えて議論をしているが,直感的な描像の数学化は難しく,シュレーディンガー方程式の爆発解の解析への応用はまだ成功していない.数値計算では線分の集まりとして曲線を近似する手法がとられるが,それを点の集合のように考える双対法の本研究課題へ本格的な応用はまだ時間がかかると思われる.一方でクリスタラインそのものの解析では,スパイラル状の多角形曲線が駆動力つきクリスタライン曲率流で運動する場合などにおいて進展が見られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
爆発解の爆発速度:擬共型不変な非線形シュレーディンガー方程式の爆発スピードの評価は,意外と単純であるかもしれないことが分かって来た.任意の時間列に沿っての爆発スピードは,解の背後にあるネルソン拡散過程を特徴付ける伊藤型確率微分方程式のブラウン運動の挙動と関係していることが示される.ただし爆発解が擬共型的な爆発スピードより遅く,かつ自己相似的なスピードより速いことは仮定されている.擬共型的や自己相似的な爆発スピードを持つ解はかなり特殊なものに限られそうであるから,あるクラスの爆発解に対しては,爆発時刻を越えての解を延長するシナリオを旨く描けるかもしれない. クリスタライン運動:スパイラル状の多角形曲線が駆動力つきクリスタライン曲率流で運動する場合は,解曲線は自己交差することなく時間大域的に存在することを示した.更に,運動モデルをある非線形の場合に拡張しても同様の結果が得られることを示した.また,縮退する凸多角形曲線が,クリスタライン曲率の正の冪に比例した速度で収縮する場合の解曲線の挙動について解析をし,収縮する際の極限形状と収縮するスピード,およびそれらの関係が明らかになった. 上記の2つの成果を結びつけるような厳密な数学的なツールが未だ見い出せていない.数値的な検証に至っては,曲線を線分の集まりとして近似するのではなく,点の集まりとして見る「双対法」と呼ばれる手法の進展が著しいが,,本課題への応用するためには,さらに時間が必要であろう.
|
Strategy for Future Research Activity |
非線形シュレーディンガー方程式の解の等高面を見ようとしているが,一般には解が熱方程式のように滑らかではないため,古典的な意味での幾何学対象よりも広い意味で考える必要がある.しかしながら,特殊な状況では解は滑らかになるが,その場合でも等高面の形状の同定は難しく思える.今後は,セミナーやワークショップを企画するなどして,知見の交換や議論の場を多くする.海外研究協力者である G. Fibich 教授(Tel Aviv大学),分担者である石渡哲哉准教授,それと曲線の幾何学的な運動の研究者である矢崎茂俊准教授(明治大学)らとの議論の機会を増やしていいく. ネルソン拡散過程と爆発スピードの関係は,数学的な定式化が可能なところまで来たので,この事実を利用して,やや狭いクラスの爆発解に限られるかもしれないが,爆発時刻を越えて解を延長するシナリオを数学的に描こうと考えている.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
爆発解の等高面の運動を点ではなく曲線として記述する曲線の運動方程式の導出を模索したが成功していない.クリスタラインの解析で双対法と呼ばれる,曲線を点の集まりとして捉えて数値的に振る舞いを検証する新しい方法に期待を寄せたが決定打を出すことができす,さらなる理論的な整備を進める必要が出て来た.当初予定していた海外研究協力者の G. Fibich 教授 (Tel Aviv 大学) の招聘を見送らざるを得なかった. 分担者である石渡哲哉准教授と数値計算上の問題点について議論を継続し数値計算のためのソフトウェアの整備も行いつつ国内外の研究集会などに参加し,曲線の幾何学的な運動の研究者らとの議論の機会を増やし情報の収集を行う.G. Fibich (Tel Aviv 大学) を招聘して,彼が共同研究者の M. Klein 博士と提唱した爆発時間を越えての解の延長法について議論をし情報交換を行う.
|