2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654061
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 澄生 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90396416)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 誠 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70312634)
|
Keywords | 国際研究者交流(アメリカ) / 国際研究者交流(オーストラリア) / 国際情報交換(アメリカ) / 国際情報交換(中国) |
Research Abstract |
平成24年度の研究活動では、研究代表者が問題提起した宇宙検閲官仮説と整合性のある漸近的普遍量の間に成立するペンローズ型不等式を得た。具体的にはMarcus KhuriとGilbert Weinsteinの2共同研究者との恊働を介して、アインシュタイン方程式の厳密解であるReissner-Nordstrom解が、与えられた事象の地平線の大きさと与えられた総電荷および総磁荷を持つ漸近的平坦かつスカラー曲率が非負な3次元多様体の中で最小のADM質量を持つという命題を示した。これはReissner-Nordstrom解の変分的な特徴付けとして、宇宙検閲官仮説の必然性を指示する微分幾何学的な状況証拠である。また一方で、得られた結果を基にすることで、総電荷および総磁荷が事象の地平線(ブラックホール)に較べて十分大きい時は、Majumdar-Papapetrou解と呼ばれるもう一つの厳密解との関わりが予想され、漸近的普遍量を独立変数として持つ関数が、アインシュタイン方程式の時間発展と関連するモース関数としての可能性が新たに示唆されることになり、本研究課題に新たな方向性を与えた。現在以上の結果を論文としてまとめており、平成25年度中に学会誌に発表する。この結果は、事象の地平線の位相的な情報(極小球面の集まりである地平線の断面の連結成分の数)と幾何学的な情報(地平線の断面の面積および総電磁荷の大きさ)の連動を定量的に示したという点で、アインシュタイン方程式に起因する幾何解析の分野において、これまでにない新しい視点を提供することになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題のキーワードである宇宙検閲官仮説に関する微分幾何学的な観察を、アインシュタイン方程式のコーシー初期値問題という観点から進めるというプログラムの推進が部分的に成功した。これまでは質量と電荷および磁荷という漸近普遍量に関する考察を進めているが、その結果、アインシュタイン方程式の解の時間漸近的な挙動の位相的な情報が、コーシー初期条件の幾何学/物理的な情報によって決定されることが予想できるようになったことは、本研究課題の更なる推進を計画する上で大きな励みとなっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
事象の地平線の面積とADM質量の間に成り立つペンローズ型の不等式でHubert Brayによって証明されているものは、いわゆる時間的対称性を持つもの、つまりコーシー初期条件である3次元リーマン多様体がアインシュタイン計量をもつローレンツ多様体内の全測地的な部分多様体である状況に限られている。今年度に新たに得られた結果をもって、Brayの正質量定理を用いたペンローズ型不等式の証明の再解釈を試みることで、全測地線的という条件を緩め、不等式が成立する状況を、物理的により自然なものに近づけることを試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度研究を効率的に推進したことに伴ない発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)