2011 Fiscal Year Research-status Report
大型宇宙望遠鏡光学試験への適用を目指した新しい波面縫い合わせ計測法の開発
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23654066
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金田 英宏 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30301724)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙望遠鏡 / 波面縫い合わせ / 光学計測 / 冷却赤外線望遠鏡 |
Research Abstract |
本研究の目的は、将来の宇宙望遠鏡の光学試験に適用できるような、新しい波面縫い合わせ計測法を開発することであり、平成23年度は3年計画の初年度であった。なお、波面縫い合わせ法とは、開口面全体を一度に測定することができないような大きな望遠鏡に対して、小さな平面鏡で瞳を分割して測定を行い、結果を一つの開口面全体の測定に縫い合わせるというものである。この方法で問題になるのが、平面鏡の面形状誤差であり、本研究ではその誤差を軽減する方法を確立する。本研究で必要な要素のうち、平成23年度は、波面縫い合わせソフトウェアの開発を行った。プログラムの基本は、重なり領域に対して最小2乗法を適用するアルゴリズムを利用した。とくに本研究では、回転シアリングを行う新しい方式で分割瞳データを取得するので、そのための計算プログラムを作成した。具体的には、直交2方向での微小回転データの差分から、平面鏡の面形状を再現し、各分割瞳データから平面鏡形状誤差を差し引いたのちに、縫い合わせるという内容のプログラムを構築した。言語はIDLを、計算機は既存のものを利用した。平面鏡の回転方式として、「固定式」と「観覧車式」(平面鏡が、向きは固定の状態で、回転する)を比較し、両者の長所短所を定量的に議論した。これらの成果について、国内のシンポジウムで研究進捗状況を発表し、投稿論文で発表するための準備を進めた。なお、初年度からの実験で使用する予定であったJAXAの望遠鏡は、東日本大震災の影響で筑波宇宙センターの設備が使えなくなったことにより、一年間、使用不可であった。そのため、本年度は実験は諦め、計算機プログラムの開発に専念した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
JAXA80cm望遠鏡を用いて、波面縫い合わせ計測を実際の実験で行う予定であった。しかし、東日本大震災によって、筑波宇宙センターの実験設備が被害を受けたことにより、実験を始められなかった。平成24年5月より実験を開始できる見込みである。その分、計算機プログラムの開発を先行して進め、遅れを後で取り戻せるように計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で必要な要素は、(1)平面鏡とその回転機構、(2)波面縫い合わせソフトウェア、(3)被測定物の光学系である。(2)はこれまでの研究でほぼ完成したので、あとは実際の実験を行いながら、改良を進める。まずは、波面縫い合わせ計測法を用いた実験を開始する。そのための(1)と(2)はJAXAに既存のものを活用する。東日本大震災による影響が無かったことを光学試験によって確認した後、本研究のための計測コンフィグレーションに組み上げる。平面鏡の回転機構の設計・製造を開始する。平面鏡は低精度のものを製作する。意図的に形状誤差を乗せることで、縫い合わせ誤差を強調させ、実験での検証を容易にする。回転機構は「観覧車方式」を採用する。平面鏡の中心を軸として、スムーズに回転する支持機構の確保が重要である。そのために、クロスローラベアリングを採用することを予定している。真空対応にするためには、市販品のベアリング部のオイルを真空グリースに変更しなければならない。望遠鏡と組み合わせて、大気中で、望遠鏡に対して平面鏡サブアパーチャーの波面縫い合わせ計測を実施する。回転シアリングを行う新しい方式で分割瞳データを取得し、回転0度位置と90度位置でのθ方向微小回転データの差分を求める。これらを直交2方向で積分して平面鏡の面形状を再現する。得られた平面鏡の形状を各サブアパーチャーのデータから差し引いた後に、縫い合わせを行う。フルアパーチャー瞬時測定結果との比較を行い、どれだけ測定精度が向上したかを評価する。さまざまな回転角ステップと微小回転角度でのデータセットを取得する。どの回転パラメータが最も安定した結果が得られるかを調べ、新しい波面縫い合わせ法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、筑波宇宙センターの実験設備に持ち込み、現場で波面縫い合わせプログラムを走らせるための、高性能なノートパソコンを購入する。また、プログラムはIDL言語を使用しているので、IDLのフロートライセンスを購入する。さらに、実験のために、平面鏡の特殊な支持機構が必要であり、クロスローラベアリングによる「観覧車方式」の回転機構を製作する。筑波宇宙センターへの出張旅費や、メーカーとの打ち合わせのための旅費を計上する。次年度以降は、引き続き、実験のための出張費用や、実験データ保存のためのハードディスク購入費、光学学会誌の論文発表のための投稿料、国際会議で発表するための出張費などを研究費として計上する予定である。
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Research Products
(2 results)