2012 Fiscal Year Research-status Report
宇宙の「生きた化石」:現在の宇宙に潜む進化最初期の銀河と巨大ブラックホールの探査
Project/Area Number |
23654068
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長尾 透 京都大学, 白眉センター, 准教授 (00508450)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川勝 望 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 助教 (30450183)
|
Keywords | 光学赤外線天文学 / 電波天文学 / 銀河天文学 / 巨大ブラックホール / 活動銀河核 / 宇宙化学進化 / 光電離モデル / 銀河進化 |
Research Abstract |
近傍宇宙(現在の宇宙)における巨大ブラックホール天体がどのような化学進化段階にあるかを系統的に調査するため、PGクェーサーと呼ばれるサンプルに注目し、平成23年度からソウル国立大学のJonghak Woo氏らと協力して巨大ブラックホール天体の紫外線スペクトルの解析を進めていた。この解析から、過去の宇宙と現在の宇宙ではクェーサーの化学組成の巨大ブラックホール質量および質量降着率への依存性が系統的に異なることが明らかになり、その解釈として過去の宇宙と現在の宇宙では巨大ブラックホールの活動性の発現メカニズムが違っているのではないかというシナリオを検討した。この成果については論文にまとめて公表した。 一方、より進化の最初期にある銀河や巨大ブラックホール天体は大量の塵に覆われている可能性があり、その場合には紫外線・可視光線・近赤外線スペクトルを用いた化学組成測定が困難となる。そこで平成23年度から、遠赤外線・サブミリ波スペクトルを用いた銀河の化学組成診断方法の検討を進めていた。本年度はこの検討結果をアルマ望遠鏡の観測結果に応用する事で、銀河の年齢が若い(10億歳以下)段階でも重元素量が既に大量に蓄積されている例があることを明らかにした。この成果はアルマ望遠鏡の共同利用観測に基づく日本初の論文として公表され、新聞などにより広く報道された。 これまでに見つかっていない低光度の巨大ブラックホール天体を系統的に探査するため、すばる望遠鏡の次世代広視野カメラHyper Suprime Camを用いたサーベイのデザインについても検討を進めた。このサーベイに関係して、関連研究者による討議を深めることを目的とした研究会を平成24年度内に複数回開催した。これらを通して、当該分野研究者間のネットワークを深化させることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の宇宙における巨大ブラックホール天体の化学組成を明らかにするための紫外線スペクトル解析について、査読論文として平成24年度内に公表することができている。また、塵に覆われた進化初期にある銀河の化学組成を明らかにするための遠赤外線・サブミリ波スペクトルを用いた診断方法についても光電離モデルに基づく検討が進み、具体的な天体に応用した例について平成24年度内に査読論文として公表に至っている。 更に、こうした研究を効率よく進めていくための当該分野研究者とのネットワークも拡大することができている。具体的には、ソウル国立大学のJonghak Woo氏らとの巨大ブラックホールの物理化学状態調査に関する共同研究体制の構築、ケンブリッジ大学のRoberto Maiolino氏らとの銀河化学進化に関する(特に遠赤外線・サブミリ波スペクトル解析についての)共同研究体制の深化、すばる望遠鏡Hyper Suprime Camを用いたサーベイに向けた準備体制の調整、といったことが順調に進められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度(3年目)にあたる平成25年度には、これまでに蓄積したスペクトルデータのうちまだ解析が済んでいないものについて、解析を完了させる。具体的には、欧州南天天文台(ESO)のVery Large Telescope(VLT)で取得した近傍低金属量銀河の可視光スペクトルおよびハーシェル宇宙望遠鏡で取得した近傍赤外線銀河の中間赤外線スペクトルの解析を完了させる。更に平成25年度内にも巨大ブラックホール天体に関する新たな観測データを、すばる望遠鏡などを用いて取得する予定であるため、その観測の着実な遂行と取得されたデータの解析を迅速に進める。また平行して、これらのデータを解釈するために必要な光電離モデル計算を幅広いパラメータ空間に対して系統的に行なう。解析されたスペクトルデータと新たに計算した光電離モデルを比較することにより、進化最初期における銀河と巨大ブラックホール天体の状況についての理解を深める。得られた成果については、年度内に論文化することを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度内に確実にデータ解析を完了させるため、部分的にデータ解析作業をアウトソース化して進める。そこで、このための役務費を使用する。また、得られた成果を論文として公表するのみならず国内外の研究会で発表し、当該分野の研究者と意見交換を進めるため、必要な国内旅費および国外旅費を使用する。具体的には、9月に仙台で行なわれる日本天文学会秋季年会、および3月に東京で行なわれる日本天文学会春期年会に参加するための旅費を使用する。
|
Research Products
(18 results)
-
-
-
[Journal Article] Resolved [CII] Emission in a Lensed Quasar at z=4.42012
Author(s)
Gallerani, Neri, Maiolino, Martin, De Breuck, Walter, Caselli, Krips, Meneghetti, Nagao, Wagg, and Walmsley
-
Journal Title
Astronomy and Astrophysics
Volume: 543
Pages: A114
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] FIR-Submm metallicity diagnostics for high-z galaxies2012
Author(s)
Nagao, Maiolino, De Breuck, Caselli, Marconi, Hatsukade, Saigo, and Matsuhara
Organizer
European Week of Astronomy and Space Science: Symposium 1 "Molecular Gas in High-z Galaxies"
Place of Presentation
Pontificia Universita Kateranense, Rome, Italy
Year and Date
20120702-20120703
-
-