2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23654079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 晃史 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (10211848)
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Keywords | 双対性 / 不変量 / 箙 / 変異 / クラスター代数 / 分配関数 / ペンタゴン関係式 / 量子ダイログ |
Research Abstract |
双対性の解明は弦理論の最も重要な課題の一つである。近年、弦理論やゲージ理論の状態の空間には三角圏の構造が入ることが明らかにされ、双対性の定式化やその理解のために、分配関数=安定状態の数え上げの母関数を知ることが極めて重要になってきている。弦理論の双対性は、Donaldson-Thomas 不変量や Gromov-Witten 不変量、3次元双曲多様体のChern-Simons 不変量など、数学の様々な分野でそれぞれ定義される不変量の間に不思議な関係を予言する。 これらに共通する構造として、箙(quiver)とよばれる有向グラフと、その変異(mutation)というデータが重要であり、モジュライ理論における安定性条件を動かした時に生じる壁超え(wall crossing)と呼ばれる現象や、3次元多様体においては理想単体の貼り合わせを記述するのに用いられる。 最近、私は寺嶋郁二氏(東京工業大学)との共同研究において、与えられた箙変異の列 (quiver mutation loop)γに対し、分配q級数と呼ばれる母関数Z(γ)を定義した。これは、以下のような著しい性質を持つ。(1) Z(γ)は箙変異の列γの反転操作や巡回シフトのもとで不変であり、圏論的なモノドロミーの不変量と考えられる。(2) 箙変異の列γの変形に対し、量子ダイログ関係式に現れるのと同様なペンタゴン関係式を満たす。(3) ADE型ディンキン図形やそのペアから自然に定義される分配q級数は、アフィン・リー環に附随するcoset 型共形場理論に現れるパラフェルミ型(準粒子型)指標公式に一致し、適当なqベキ補正のもとでZ(γ)は保型形式となる。分配q級数は組合せ論的データのみから定義され、箙が表す数学的対象の詳細には依らないので、双対性の背後にある共通の性質や量子化の機構を追究する上で役立つと期待される。
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