2011 Fiscal Year Research-status Report
宇宙線生成核種・炭素14の超高精度分析による宇宙線異常増加イベントの年代決定
Project/Area Number |
23654080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮原 ひろ子 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (00532681)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 宇宙線 / 太陽活動 / 太陽圏 / マウンダー極小期 / 炭素14 / 加速器質量分析計 / 宇宙気候学 |
Research Abstract |
本研究では、マウンダー極小期(西暦1645-1715 年の黒点消失期)の氷床コアから発見された、約28 年に一度の、1 年スケールの宇宙線異常増加について、その絶対年代を決定することを目的とし、樹木年輪中の宇宙線生成核種・炭素14 の超高精度分析を行っている。分析により、宇宙線到来量の最大フラックスにも制約をつけることができる。 炭素14は、宇宙線の変動を唯一「絶対年代」で記録しているが、1 年スケールの短周期変動は大気中で強く減衰するため、通常はそのようなイベントを炭素14により検出することは困難である。本研究では、測定精度を、加速器質量分析の従来の測定精度(約3.5‰)の1/4 程度に向上させることによって、1年スケールの宇宙線異常増加イベントの検出を試みている。分析には、山形大学高感度加速器質量分析センターに導入された炭素14専用小型加速器質量分析計を用いている。 平成23年度は、炭素14濃度の系統誤差を小さくするための基礎的な分析と、宇宙線異常増加が発生した年代付近の1670-1674 年と1698-1702 年を中心に、重点的な分析を行った。その結果、0.75‰の分析精度を達成することに成功した。 マウンダー極小期に発見された宇宙線異常増加は、過去数百年間でも最大規模の宇宙線イベントであるため、正確な年代の特定により、宇宙線が気候システムに及ぼした影響をトレースするための重要な標識を確立できる可能性がある。また、宇宙線の22年変動パターンが詳細に明らかになることにより、太陽圏の変動の物理や、宇宙線の変調の物理、特に太陽圏内における宇宙線の大規模循環について重要な示唆が得られると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加速器質量分析計による炭素14濃度分析の達成目標精度である0.1%以下の精度を達成できた。また、宇宙線異常増加イベントのうち2つについて重点的な分析データが得られているほか、そのうちの1つについてはおおむね年代の特定に成功している。平成23年度に構築した分析手法・解析手法をもとに、平成24年度中には残りのイベントについてもデータの取得が完了できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1700年付近、1724年付近の樹木年輪中の炭素14濃度を重点的に分析し、1年スケールの宇宙線異常増加の絶対年代を決定する。また、炭素循環モデルに基づく数値計算により、宇宙線飛来量を厳密に推定する。分析結果に基づき、古気候復元データとの比較を行い、宇宙線が気候システムに与える影響について議論するとともに、22年変動パターンの特性をもとにマウンダー極小期における太陽圏環境についての推定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に、山形大学高感度加速器質量分析センターの所有する炭素14専用小型加速器質量分析計の利用分担金として使用する。そのほか、データを公表し、マウンダー極小期についての太陽圏環境について議論するために第13太陽風国際会議に出席するための旅費を計上している。樹木年輪試料の前処理のための薬品およびガラス器具類も計上している。
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Research Products
(4 results)