2011 Fiscal Year Research-status Report
ボース凝縮体の超高分解能分光によるナノスケールでの重力法則の検証
Project/Area Number |
23654086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 義朗 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40226907)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ボーズ凝縮 / 重力法則 / 高分解能分光 / ナノスケール / モット絶縁体 |
Research Abstract |
本研究では、運動を制御された原子を二つ用意してその間にナノメータースケールで働く力を超高精度に測定することにより、重力の補正項の上限値を決定することを目的としており、そのために、ボース・アインシュタイン凝縮した原子集団を光格子と呼ばれる周期的なポテンシャルに導入し、特に、一つの格子点に二つの原子がある状態:モット絶縁体状態を用意し、それから2光子を用いた光会合分光を行い、分子の幾つかの束縛エネルギーを決定した。本研究では、重く、原子間ポテンシャルが単一であるイッテルビウム(Yb)原子の168Yb,170Yb, 174Ybの3つの同位体についての、分子の振動状態の広がりがナノメータースケールのものである、1GHz以下の共鳴周波数に対応する合計8つの束縛エネルギーを1kHzレベルで精密に測定を行うことに成功した。 特に注意すべき系統的誤差として、光会合光によるエネルギーシフト、原子間相互作用によるシフト、原子と分子の分極率の違いによるシフト、を考慮し、全て、光会合光強度依存性、原子数依存性、光トラップ光強度依存性、を測定することにより、取り除くことに成功した。 その結果、全てのデータを用いて、単純なC6, C8, C12という3つのパラメーターでフィッティングした結果、100kHz程度の明らかな不一致を確認した。これは単純なモデルではすでに説明できないほど実験データが正確になったことを意味しており、その食い違いを説明する理論の必要性を示した意味で重要な結果であると考えている。また、以上の測定から、原子と分子の散乱長を決定することに成功した。また、光格子中で2重占有のサイトと3重占有のサイトからの光会合共鳴のシフトを観測し、原子と分子の散乱長との無矛盾性を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたとおり、複数の同位体に対してその複数の束縛状態について束縛エネルギーを1kHzの精度で決定することに成功、そのデータを用いて理論モデルとフィッテイングした結果質量に依存しない単純な3パラメーターモデルでは説明できないことを発見、を成果として得ている。さらに、原子・分子相互作用の決定まで実現し、新しい知見を得ている。したがって、研究は順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、特に大きな変更は必要なく、当初の計画通り進めることで、研究目的を達成できると考えている。今後は、176Yb、171Yb, 173Ybなど他の同位体についても、複数の束縛状態について束縛エネルギーを決定し、さらに高精度なデータを集める。それとともに、ボルン・オッペンハイマー近似の破れの効果から生じる質量(同位体)依存性を理論研究者とともに、評価する。これにより、本研究の目的である重力の近距離補正の制限決定を達成できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度においては、これまでに開発した手法を引き続き用いるため、装置の大きな変更なく、おもに消耗品である光学部品に使用して、上記の研究を行う。研究計画に変更はない。
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Research Products
(30 results)