2011 Fiscal Year Research-status Report
チェレンコフ光を利用した、汎用的な高時間分解能ガンマ線測定方法
Project/Area Number |
23654088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 俊 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60294146)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 検出器 / チェレンコフ / 光 / 素粒子原子核 / 医療機器分野 / ガンマ線 / 時間分解能 |
Research Abstract |
本研究は、チェレンコフ光を用いて応答速度が遅いと考えられているガンマ線検出器の時間分解能を大幅に向上することを目標としている。今回採用した時間決定方法は大変汎用的であり、素粒子原子核実験(高エネルギーガンマ線測定)、医療機器分野(低エネルギーガンマ線測定)の両方に利用が可能である。現在までは、前者の高エネルギー実験に特化した検出器開発を行ってきた。具体的な研究方法であるが、scintillating光の立ち上がり時間が極端に遅いBGO結晶を用意し、ガンマ線の入射で発生するscintillating光とCherenkov光の両方を高速応答の光電子増倍管で読み出すテスト実験を行った。光電子増倍管は浜松ホトニクス社の石英窓を持つ超高速応答タイプを使用している。実験はTRIUMF研究所(カナダ)でガンマ線の代わりに陽電子線を用いて行った。オシロスコープの画面上で、Cherenkov光のパルスを確認することが出来て、そのパルスに時間を決定するように電気回路を最適化することに成功した。時間分解能の値は解析をしている段階ではあるが、概ね100psec程度であり、従来のBGOの性能(数nsec)からは考えられないような数字が得られている。現在は、更に性能を向上されるべく、scintillating光の波高による補正を試している最中である。これにより、2割程度の改善が期待され、予定していた100psec以下の分解能が達成できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、チェレンコフ光を用いて応答速度が遅いと考えられているガンマ線検出器の時間分解能を大幅に向上することを目標としている。今回採用した時間決定方法は大変汎用的であり、素粒子原子核実験(高エネルギーガンマ線測定)、医療機器分野(低エネルギーガンマ線測定)の両方に利用が可能である。現在までは、前者の高エネルギー実験に特化した検出器開発を行ってきた。具体的な研究方法であるが、scintillating光の立ち上がり時間が極端に遅いBGO結晶を用意し、ガンマ線の入射で発生するscintillating光とCherenkov光の両方を高速応答の光電子増倍管で読み出すテスト実験を行った。実験はTRIUMF研究所(カナダ)でガンマ線の代わりに陽電子線を用いて行った。時間分解能の値は解析をしている段階ではあるが、概ね100psec程度であり、従来のBGOの性能(数nsec)からは考えられないような数字が得られている。以上により、高エネルギー分野への応用において研究は達成されたと言える。一方、低エネルギー分野に関しては、これから取り組むことになり。実験技術の観点からは、高エネルギーのほうが容易であるために、まずはこちらから始めたことに原因がある。今後は、小型のBGO結晶を用意し22Naから放出される511keVガンマ線ペアを利用して時間分解能を最適化する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、チェレンコフ光を用いて応答速度が遅いと考えられているガンマ線検出器の時間分解能を大幅に向上することを目標としている。これまで、TRIUMF研究所にて(カナダ)陽電子ビームをBGO検出器に照射することで、従来のscintillating光ではなくCherenkov光によって、陽電子入射時間を決定することに成功した。今後は、これらのテスト実験で得られた結果をより精度をあげるため、更なるテスト実験を予定している。本研究の採用した時間決定方法は大変汎用的であり、素粒子原子核実験(高エネルギーガンマ線測定)、医療機器分野(低エネルギーガンマ線測定)の両方に利用が可能である。前者は、J-PARC E36実験(レプトンユニバーサリティの破れ探索実験)のガンマ線検出器に応用される。ガンマ線の検出にはCsI(Tl)結晶を用いており、BGOと似てはいるものの、テストは必要となる。すなわち、実際に実験に使用するCsI(Tl)結晶に高速応答の光電子増倍管を取り付け、TRIUMF研究所にて再度性能を確認する実験を行う。後者は、22Naから放出される511keVガンマ線ペアを用いて、時間分解能がどこまで向上できるかを引き続きテストする。最近注目を集めているpositron emission tomography(PET)に時間測定を加えることで、高性能化を図ることが追求される。ガンマ線の検出は小型のBGO結晶に、小型かつ高速応答の光電子増倍管を取り付けたものを利用する。以上の2種類のテスト実験を通じて本研究のテーマである、Cherenkov光を用いた時間分解能向上技術を、高エネルギーと低エネルギーの2つの領域で確立させる。その後は、実際に素粒子原子核実験に利用したり、mini-PETシステムを構築して動物実験に仕様、等の実際への応用を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、チェレンコフ光を用いて応答速度が遅いと考えられているガンマ線検出器の時間分解能を大幅に向上することを目標としている。これまで、TRIUMF研究所にて(カナダ)陽電子ビームをBGO検出器に照射することで、従来のscintillating光ではなくCherenkov光によって、陽電子入射時間を決定することに成功した。今後は、これらのテスト実験で得られた結果をより精度をあげるため、更なるテスト実験を予定している。本研究の採用した時間決定方法は大変汎用的であり、素粒子原子核実験(高エネルギーガンマ線測定)、医療機器分野(低エネルギーガンマ線測定)の両方に利用が可能である。研究費の使用計画としては、テスト実験のための検出器の用意にあてられる。その中で尤も重要な物が、高速応答の光電子増倍管である。また、Cherenkov光は紫外領域に強い強度をもつので、光電子増倍管の光電面は石英で作られている必要がある。これらの条件をみたす光電子増倍管は、浜松ホトニクス社から販売されていて、高エネルギーと低エネルギーの両方に使うために、2インチと3/8インチの光電面を持つものを購入する。これらを大型のCsI(Tl)結晶と小型のBGO結晶に取り付け、TRIUMF研究所にて再度照射実験を遂行する。次年度の研究費は、これらのテスト実験の旅費などにも利用される。また、結晶の加工費、システム全体の遮光、光電子増倍管からの信号を電気回路へ導くケーブル、等々へも当てられる。
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