2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654090
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
林 青司 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80201870)
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Keywords | 標準模型を超える理論 / ヒッグス相互作用 / 統一理論 |
Research Abstract |
この科研費による研究は、標準模型を超える理論の統一を目指すものである。現在まで提唱されて来た代表的な標準模型を超える理論は階層性問題の解法を探る試みから生まれて来たと言っても過言ではない。研究代表者は1998年に、こうした理論の候補として、ヒッグスを高次元ゲージ場の余剰次元成分と見なす“Gauge-Higgs Unification (GHU)”理論を提唱した。この理論では高次元ゲージ対称性の帰結としてヒッグス質量への量子補正が有限と成り(量子レベルの)階層性問題が解決される。 代表者は、このGHUとdimensional deconstruction やLittle Higgs といった、一見異なる他の標準模型を超える代表的な理論の間に密接な関係がある事に気が付いた。この科研費による研究では、これらの理論の間の関係を明らかにすると共に、これらを統一する理論の可能性を探ることを主目的としている。 当該年度の研究では、まず、GHUではヒッグスがアハロノフ・ボーム位相と物理的には見なせる事からの帰結として、標準模型の予言から逸脱する“異常な”ヒッグス相互作用、特に湯川相互作用、ゲージ相互作用に関して解析し、異常相互作用の本質的な起源が余剰次元での並進対称性の破れにあることを解明した。その成果を論文として国際学術雑誌に掲載し、またいくつかの国際会議等で招待講演を行った。 更には、標準模型を超える理論の統一に向けて、dimensional deconstruction における異常相互作用に関する研究を開始した。この理論はGHUにおいて余剰次元を格子に離散化した理論と見なすことが可能であり、余剰次元の格子化によって並進対称性が明らかに破れることから、異常相互作用が必然的に得られるとの認識に到り議論を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、まずGauge-Higgs Unification(GHU)の(超対称最少標準模型等には見られない)特徴的な予言として、標準模型の予言から逸脱したヒッグスの“異常相互作用”に関する研究に力を注ぎ、その結果、異常相互作用の本質的な起源が、フェルミオンのバルク質量といったものの存在に起因する余剰次元方向の並進対称性の破れにあることを解明した。こうした論点は今まで明確には述べられておらず、LHC実験の最新データによりヒッグスが注目されている中、その相互作用に関して新しい視点を与えるものと期待される。 更に、本来の標準模型を超える理論の統一という観点から、dimensional deconstruction での同様なヒッグスの異常相互作用の研究にも着手し、まだ論文完成にまでは至っていないが、着々と研究が進展している。こうした研究の成果は、アメリカの国際的な学術雑誌に掲載され、また、研究代表者が行ったいくつかの国際会議での招待講演によって広く公表されている。 こうした状況から、当該年度の研究の進展は、当初の研究目的に沿ったおおむね順調なものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に使用する予定の研究費があるのは、当該年度の研究の過程で、既に述べたようにdimensional deconstruction というGauge-Higgs Unificationと深く関係するシナリオにおいても、ヒッグスに関する“異常相互作用”が生じ得る、という新たな知見を得て、このテーマに関して更なる研究を進めるための費用を確保する必要が生じたためである。 今後の研究方針としては、まずはこうしたヒッグスの異常相互作用のみならず、真空期待値により質量を得るW やZ といった弱ゲージボソンのゲージ相互作用に生じる異常相互作用に関しての研究を完成させたい。 更には、本来の目的である、Little Higgsやdimensional deconstruction といった密接に関連するシナリオとの理論の統一に向けた議論を推進したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、代表者の共同研究者との研究討論のための旅費、国際会議、学会、研究集会、等での研究成果発表のための旅費、研究を進める上で必要なパソコンのソフト等の購入、等に充てたいと考えている。
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