2013 Fiscal Year Research-status Report
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23654090
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
林 青司 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80201870)
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Keywords | 標準模型を超える理論 / ヒッグス相互作用 / 統一理論 |
Research Abstract |
この科研費による研究は、標準模型を超える理論の統一を目指すものである。研究代表者は1998年に、標準模型を超える理論として、ヒッグスを高次元ゲージ場の余剰次元成分と見なす“Gauge-Higgs Unification (GHU)”理論を提唱した。この科研費による研究では、このGHUとdimensional deconstruction やLittle Higgs といった、一見異なる他の標準模型を超える理論とを統一的に理解する事を目指す。 昨年度からのGHUにおける異常ヒッグス相互作用(標準模型の予言とは異なる湯川結合等)に関する研究により、異常相互作用が現れるためには、物理量がヒッグス場に関して周期的であること、および余剰次元方向の並進対称性の破れが存在することが本質的に重要である、という知見が得られた。この研究成果を、国際学術雑誌PTEPの招待論文として寄稿し雑誌に掲載された。 その他に、当該年度の研究ではdimensional deconstruction(DD)シナリオにおける異常ヒッグス相互作用に関する研究を行った。DD理論はGHUにおいて余剰次元を格子化した理論と見なすことが出来、従ってGHUの場合と同様に異常ヒッグス相互作用が得られると期待される。DDにおいては、ヒッグス場は格子点を結ぶ“リンク変数”として非線形実現され、ヒッグス場に関する周期性は保証される。また、格子化によって余剰次元方向の連続的な並進対称性も破られる。こうした期待のもとにDDシナリオにおける湯川結合(に相当する結合定数)を求め、期待通り異常相互作用が得られることを確かめた。余剰次元の性質により異常相互作用が得られるので、異常ヒッグス相互作用は粒子の種類に依らず普遍的に現れるというGHUとは異なる特徴もある事も理解された。研究成果については、近日中に論文として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究においては、まずGauge-Higgs Unification (GHU) シナリオの特徴的な予言としての標準模型の予言から逸脱したヒッグスの“異常相互作用”に関し昨年度に引き続き研究を継続し、その結果、異常相互作用の本質的な起源が、ヒッグス場に関する周期性と並んで、余剰次元方向の並進対称性の破れにある事、また標準模型の予言からのずれは、質量次元の大きな演算子によって記述され、従ってその効果はコンパクト化スケールを大きくする極限で消えること等を明確にした。こうした成果を踏まえ、今年度はdimensional deconstruction シナリオにおける異常ヒッグス相互作用に関する研究をほぼ完成させ、近く論文を発表予定である。更には、標準模型を超える理論として代表的な超対称性理論を用いた(インフレーション)宇宙論に関する共著論文も完成させ学術雑誌に掲載した。こうした研究の成果は、代表者による国内の数か所の大学におけるセミナー講演や、共著者による物理学会や国際ワークショップにおける招待講演にて発表された。 こうした状況から、当該年度の研究の進展は、当初の研究目的に沿ったおおむね順調なものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
期間を一年間延長しての、今後の研究の推進方策として、まずはdimensional deconstruction シナリオにおける異常ヒッグス相互作用の研究を、物質場がフェルミオンの場合に拡張する事が考えられる。また、GHU やDD と関係が深いLittle Higgs シナリオにおいても同様の異常ヒッグス相互作用が得られるかについても研究を開始したいと思う。 LHC実験でヒッグスは“軽い”ことが明らかになったが、超対称標準模型(MSSM)と並んで、GHUやDD、Little Higgs シナリオでも軽いヒッグスが帰結される。実験事実はこれらの標準模型を超える理論を示唆している様にも思えるが、その成否を明らかにするためには、これらのシナリオにおけるヒッグス質量への量子補正を含めた予言を精査する事が非常に重要になる。このテーマに関して、既にGHUにおけるヒッグス質量の予言に関する論文を一つ発表しているが、更なる研究として、DDやLittle Higgs におけるヒッグス質量の予言に関しても研究を行って行きたいと思う。 更には、本来の目的である、GHUのDD やLittle Higgs シナリオとの理論の統一に向けた議論を出来る限り進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の研究計画であったdimensional deconstruction シナリオにおける異常ヒッグス相互作用の研究は一応の完成を見たが、物質場をより現実的なフェルミオンに拡張する事の重要性、また、little Higgs といった関連する他の標準模型を超えるシナリオにおける異常ヒッグス相互作用の可能性、といった当該科研費の課題に深く関連した新たな知見を得た。更に、今年度の研究で得られた、GHUシナリオにおいてヒッグス質量を有限値として予言可能との新たな知見に基づき、dimensional deconstruction シナリオや little Higgs シナリオにおいても同様な予言が可能ではないかとの期待が生じた。こうした新たな観点からの研究を次年度に行い、その成果を発表するための経費として使用する。 主として、上記の新たな知見に基づく研究を遂行するための研究討論、資料収集のための旅費、また得られた研究成果を学会、セミナー等で発表するための旅費として使用する。
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