2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654096
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋本 幸士 独立行政法人理化学研究所, 橋本数理物理学研究室, 准主任研究員 (80345074)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 原子核 |
Research Abstract |
超弦理論のホログラフィーをクォークの量子色力学を解くことに用い、核子多体系の有効作用を低エネルギーで求め、それを元に原子核の様々な物理量を計算することで、原子核物理学自体を再構築できないかと試みる研究である。研究担当者が過去に提唱した、バリオン多体系の有効作用を、まずは核子数が多い場合の極限で解くことを試みた。特に、核子数が多い場合は、重い原子核であるはずなので、ミクロな物理に基づいた手法では、通常の原子核物理学では非常に扱いが困難となる。一方超弦理論の核子有効作用の場合、この極限は逆に取り扱いやすい極限となり、メリットである。平成23年度の研究では、解析的に、核子が多数ある場合には核力によりそれらが束縛状態を成し、原子核を形成することが分かった。これは、量子色力学から直接、原子核の形成を解析的に示すことが出来たという意味で、意義深い。また、その束縛状態である原子核の半径が、核子数の1/3乗に比例することが示された。これは、原子核の非常に基本的な要素であるため、超弦理論が原子核を矛盾無く示している証拠の一つとなる。これらの研究成果を元に、各地で招待講演等を行い、様々な研究者と議論を行った。特に、格子ゲージ理論の研究者とコンタクトを取り、議論を行った。その結果、ストレンジネスがバリオンに含まれる場合が、中性子星の中心部などで重要となるので、ストレンジネスを取り入れた近接バリオン間力を計算するという方針で、現在研究を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子核の基本的な物理像である、束縛する核子多体系というものが、超弦理論から再現されたので、当初の期待通り順調に研究が進展していると考える。一方、その近似が妥当なものか、また、そこから原子核の安定性等を議論できるかは今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレンジネスが入ったハイパー核や、ストレンジネスが入ったハイペロンの間の近接力について、計算を勧めて行く。また、フレーバー依存性が原子核の安定性とどのように関係しているかを具体的に計算する。さらに、解析的な方法のみを行うのではなく、数値計算を具体的に実行することも考える。解析計算では、核子数が大きい場合に、フレーバー依存性が蒸す出来ることが示唆されているが、それが正しいのかどうかも数値計算と解析計算を比較することによって実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
翌年度以降に請求する研究費と合わせ、数値計算に必要なコンピュータ周辺機器等を購入し、数値計算の実行を行う。また、研究成果について広く研究者会コミュニティに還元するため、講演を行う。
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Research Products
(6 results)