2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654096
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 幸士 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80345074)
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Keywords | 超弦理論 / 原子核 / 有限密度 |
Research Abstract |
超弦理論は、その豊富な数学的構造の中で発見された「ゲージ重力対応」を用いることで、応用研究の道が開けて来た。この研究では、ゲージ重力対応を量子色力学に適用し、その提起用を究極的に進め、原子核物理学の新しい描像を得ることを目的にしている。特に、平成24年度は、行列模型による核子多体系の記述等、有限密度系への応用や、その磁場中でのレスポンス等に研究の焦点を絞って、研究を行った。まず、本題の研究課題である、行列模型を用いた原子核の描像づくりには、行列模型でもその有効な領域を調べる必要があり、遠距離核力を再現する行列モデルを研究した。この研究はまだ研究論文としては発表できていない。一方で、それに加え、有限密度系でのゲージ重力対応の一般的な予想を探求することで、原子核のような有限密度系の性質を得ることが出来ると考え、物性理論で多用される定理が量子色力学のような強結合系でも適用できるのかという問題意識を得た。そこで、物性理論の基礎定理であるラッティンジャー定理が、準粒子描像が存在しないような領域で成り立つかどうか、また磁場のような外場の元でどうなるかを、ゲージ重力対応を弦理論を用いて調べ、論文として発表した。結果は、準粒子描像が成り立たないような非閉じ込め相ではラッティンジャー定理が成り立たず、一方で閉じ込め相では磁場を加えたりと言ったさまざまな外的な作用の元でもラッティンジャー定理が成立することが示された。これは、無限系への原子核物理の拡張において有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超弦理論のゲージ重力対応を量子色力学に適用した際の、原子核の新奇記述の構築、という最終目的からは、残念ながら大幅な進展はまだ達成できていない。というのは、遠距離核力の様相を取り入れたような、行列模型の一般化がまだ定式化できていないからである。この定式化のため、様々な数値計算や、弦理論の双対性の利用、また、近似法の開発を行って来たが、まだ完成していない。一方で、付随した状況の理解は飛躍的に進み、パイオンの交換が行列模型でどのように現れるべきかの理解も進んでいる。また、無限系に拡張した際の理解は、物性系との比較も加えて論文を出版した。これらの周辺の理解が、本質的な課題遂行に今後大きく役立つと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
超弦理論のゲージ重力対応で導出された行列模型の、古典的部分について、近似法を開発する。また、長距離での核力を再現するような状況での行列模型の開発を行う。これらは、並行的に進め、最終的には原子核の核図表における中性子ドリップラインの存在を理論的に導出すべく、注意して進める。一方で、物性理論、特に強相関電子系と量子色力学とのアナロジーに注目し、不安定性の解析をゲージ重力対応で進める。これは、原子核の安定性や、様々な外場における原子核(一般に強結合の場の理論)の応答を知るのに重要である。強い電場や磁場の中の原子核を記述することも視野に入れ、研究を進める。研究成果が出た場合は、いち早く国内外で報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外の国際会議にて研究発表を行うため、旅費として使用する。また、研究発表用に使うコンピュータソフトウエアや、コンピュータ周辺機器を購入し、研究発表をスムーズに行う。
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Research Products
(6 results)