2011 Fiscal Year Research-status Report
マルチフェロイック物質における電気分極を担う超微小原子変位の検出
Project/Area Number |
23654098
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 宏之 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (50312658)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 磁気誘起強誘電性 / 精密結晶構造解析 / 原子変位 / X線 |
Research Abstract |
本研究の目的はマルチフェロイック物質における強誘電性を担うサブピコメートルの原子変位を,放射光X線を用いた超精密結晶構造解析により検出し,磁気誘起強誘電性の微視的起源解明を目指す事である.原子変位による信号は極めて微弱なため,多重反射を避けて信号を高精度で検出する必要がある.本年度は多重反射回避プログラムの開発と,それらの放射光X線回折実験への適用を試みた.マルチフェロイック物質YMn2O5の単結晶を育成し,その結晶を直径50ミクロンの球に加工する事に成功した.これにより,X線の吸収の影響を最小限にして信号を高精度で検出できるようになった.強誘電相での実験のため,放射光X線回折実験とHeガス吹き付け装置による結晶の冷却を組み合わせる必要があったが,結晶付近の温度勾配が大きすぎて,強誘電相で安定して測定することができなかった.また,結晶性が期待したほど良くなかった為,多重反射を完全に避けきれずに微弱な信号と重畳してしまい,正しい信号強度を得ることができなかった.しかしながら,強誘電相におけるブラッグ反射の消滅則の破れを観測する事には成功し,強誘電相の空間群の決定には成功した.信号の高精度検出の為に,シリコンドリフト検出器の導入を試みたが,現状のシリコン素子では薄すぎて,使用したいX線のエネルギー領域では検出効率が極端に悪くなってしまう事が分かった.厚いシリコン素子を用いた検出器の製作をメーカーに依頼していたが,23年度内の納入は間に合わなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まだ解決していない問題点は多数あるが,概ね順調に研究は進展している.問題点の解決の見通しはほぼ全て立っており,24年度にテスト実験を繰り返しながら本研究を推進したい.
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Strategy for Future Research Activity |
多重反射回避プログラムの改良は引き続き行う.結晶を球形に加工する際に入る歪みで結晶性が悪くなっている問題があるが,加工時間や加工後の後処理(エッチング等)を行う事で結晶性を良くする.冷却中の結晶付近の温度勾配については結晶をマウントする棒に様々な工夫を施して現在最適条件を探索中であり,今後も続けて行く.シリコンドリフト検出器に関しては,24年度には納入される予定であり,これを既存のX線4軸回折装置に組み込み,高精度の信号検出を実現する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シリコンドリフト検出器の納品が間に合わなかった為に,その分の未使用額が発生している.本年度は前年度の未使用額と本年度の予算を合わせて,シリコンドリフト検出器およびそれに組み合わせるマルチチャンネルアナライザの制作費に物品費として大部分を充てる.試料冷却のための高純度Heガスも購入する.得られた成果を発表し,また情報交換する為の国内学会旅費も計上する.
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