2012 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイック物質における電気分極を担う超微小原子変位の検出
Project/Area Number |
23654098
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 宏之 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (50312658)
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Keywords | 磁気誘起強誘電性 / 精密結晶構造解析 / 原子変位 |
Research Abstract |
マルチフェロイック物質における強誘電性を担うサブピコメートルの原子変位を,放射光X線を用いた超精密結晶構造解析により検出する事を試みた.前年度に製作した結晶球形加工装置を用いて,測定試料を200ミクロン程度の球形にし,高エネルギー加速器研究機構Photon Factoryにおいて,X線回折実験による結晶構造解析をおこなった.検出信号強度に混入する「偽の」多重反射を避ける為に,4軸回折計を用いて,多重散乱を回避する条件を計算し,1点1点のブラッグ反射強度を測定した.試料の冷却にはヘリウムガス吹き付け装置を用いたが,ガスの冷却パワーと,外から混入する熱が不均質に混ざり合う為,測定の最中に試料の温度が数十ケルビン以上変化してしまい.強誘電相で安定して測定する事ができなかった.その後試料のマウント法などを工夫する事により,低温で安定して測定が行えるようになった.ヘリウムガス吹き付け装置を用いた同種の測定は世界中の放射光施設でおこなわれているが,同様の温度不均一性が多数報告されている.我々が調べた限り,低温で安定してこの種の実験がおこなえたのは我々が世界で始めてである. 測定の結果,多重反射の混入を完全に避ける事はできなかったが,消滅則の破れを系統的に見いだし,これにより強誘電相の空間群をユニークに決定する事に成功した.混入する多重反射の起源は恐らく球形加工の際の歪みや,周囲に付着した小さな結晶からくるものである事が考えられる.今後は表面の歪みを低減して加工できる装置を製作し,再び測定を行う予定である. 微弱な信号を観測する為には試料から発せられる蛍光X線等を除去する必要がある.従来の検出器ではそれはできなかったが,本年度に高エネルギー分解能のシリコンドリフト検出器を実験室に導入し,蛍光X線の除去を試みた.その結果,ブラッグ反射と蛍光X線の寄与を完全に分離する事に成功した.
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Research Products
(6 results)