2011 Fiscal Year Research-status Report
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23654100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 俊人 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00192526)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ディラック電子系 / 半導体超格子 / アンチドット格子 |
Research Abstract |
本研究の目的である半導体超構造による2次元ディラック電子系の実現は、グラフェンと同等な系をよく制御された半導体上に実現するという意味で、基礎的かつ応用的にも重要な課題である。平成23年度はその実現のための準備研究を行った。(1)質量ゼロのディラック電子型バンド構造を有する半導体2次元超構造の検討 Park-Louieの提案による2次元電子系に3角格子状に多数の穴(アンチドット)を周期的に穿ったアンチドット格子は、現実のGaAs/AlGaAsヘテロ界面ではアンチドット周辺の電子系が空乏化して実効的にアンチドット径が400nm程度も増大してしまい、さらにアンチドットの不揃いのため系に大きな乱雑さを導入してしまうため、ブロッホ電子系の形成は極めて困難であるという結論に達した。より現実的で有望な構造として、周期的変調ゲート電場により2次元電子系に周期ポテンシャルを導入する方法を検討した。この方法はAlbrechtらがHofstadter準位構造を観測した際に用いられ平面超格子でブロッホ電子系を形成した実績のある方法である。静電的に周期ポテンシャルを導入するため、各周期の不揃いによる乱雑さが小さくブロッホ状態を形成可能なコヒーレントな電子系を実現できる。周期ポテンシャルの振幅が小さい困難があるが、この構造を用いて研究を行うこととした。(2)質量ゼロのディラック電子型サブバンド構造を有する半導体2次元超構造の作製 (1)に基づきナノスケール周期変調ゲート構造を持つ半導体2次元電子FET構造の試料を作製する。高移動度GaAs/AlGaAsヘテロ接合基板上に周期的変調構造を導入した電子線レジスト(PMMA)膜を形成してゲート絶縁膜とする。しかし電子線描画装置のトラブルのため、素子構造作製には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲート絶縁膜の変調構造を作製するために使用する電子線描画装置の故障(電子線偏向用電源の故障)により、試料作製の不可能となったため、試料の試作と伝導特性の実験に関する部分に遅れが生じた。電子線描画装置の修理は年度末に完了したので、今後は研究を遂行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は試料作製と伝導実験による評価を繰り返して行い、ディラック電子系の実現に向けた条件最適化を行っていく。 具体的には、作製した周期変調ゲート構造を持つ試料の電気特性を極低温下で測定し、超格子効果の有無、ディラック電子系形成の有無の判定を行う。測定には現有の希釈冷凍機+超伝導マグネットシステムを使用する。磁気抵抗の磁場依存性に現れる量子振動の解析から、超格子効果でバンドがサブバンドに裁断されているか否かを判定する。また抵抗のゲート電圧依存性(キャリア数依存性)がゼロギャップ系特有のピーク構造を持つか、磁場を加えるとディラック系特有のランダウ量子化つまりゼロモード準位(n=0)が現れるかどうかなどを調べ、ディラック電子系の形成を判定する。 ディラック電子系が実現できた場合には、半整数量子ホール効果の確認、デバイス形状を細線に絞り込んだ場合(ナノリボン)のエネルギーギャップ形成の確認、周期変調パターンを途中で変えることにより導入したポテンシャル段差におけるクライントンネルの実験、周期ポテンシャルに人為的に乱れを導入することによる反局在と弱局在の競合の実験、などの各種実験を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物件費として、作製した素子の微細加工状況の確認に必要な場合、デジタルマイクロスコープの導入を検討する。その他、蒸着材料等の消耗品費に使用する。旅費として、2012年7月にフランスで開催される半導体強磁場国際会議(HMF2012)に参加費を予定している。
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