2011 Fiscal Year Research-status Report
光合成アンテナ系を基礎にした新しい光エネルギー捕集・変換スキームの提案
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23654105
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石原 一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60273611)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光合成 / 太陽光 / 励起エネルギー移動 / プラズモン / 金属ナノ構造 |
Research Abstract |
本研究においては光合成アンテナ系における高効率エネルギー移動の機構と本グループが発見した超エネルギー凝集の機構を活用した新奇な太陽エネルギー変換機構を提案することが目的である。 この目的に向かって本年度は、紅色光合成細菌の光アンテナ系のサイズ効果を調べた。その結果、エネルギー移動を起こすための単位ユニットとしての分子円環サイズがより大きいほど、高効率なエネルギー移動を起こすことが明らかにした。このことは生体系における資源と見なされる色素の数を大幅に節約することにもなり、工学応用を目指した人工系を想定した場合の貴重な設計指針となり得る。なお、アンテナ系での緩和機構や必要な移動距離に応じた最適サイズがあると考えられ、今後その点についての検討も行う。また、色素分子間のエネルギー移動に関して、色素間の量子相関を無視した場合と取り入れた場合の比較から、量子相関が効率的エネルギー移動に一定の役割を果たしていることを明らかにした。量子相関が正しく取り入れられた場合には隣り合う色素間のポピュレーションの差が緩和され、より遠くへポピュレーションを運ぶ役割を果たす。 また、我々のグループでは、光アンテナ系と量子ドット(或いは分子)が量子力学的に結合した場合に、アンテナ励起に使われたエネルギーの大半が量子ドットに集中する超エネルギー凝集が起こる条件を見いだしているが、本年度、分子が3準位系を構成した場合に、弱い励起光であっても極めて効果的に量子ドットの反転分布を起こせることを結合振動子モデルの解析により明らかにした。このことは超エネルギー凝集による高効率な触媒反応系構築への重要な指針となり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は、光合成アンテナ系のLH2分子、及び反応中心系の LH1の配置制御により、広い範囲でエネルギー凝集が起こり得るかを検討することを目標とした。この中で特に項目としてあげた、色素の配置・配向ゆらぎ、緩和の効果、色素間の量子力学的相関等の効果について調べ、予定通り知見を蓄積することが出来た。一方で、項目としてあげた緩和の非マルコフ性の効果や反応中心であるLH1が混在する系でのエネルギー移動効率に対する各種パラメーターの依存性についての調査は、現在進行中となっている。 一方で、本来24年度に計画していた、アンテナ系と量子力学的に結合させる量子ドット(或いは分子)の準位構造の自由度を拡張することによって期待される高効率励起については本年度において極めて重要な進展があり、アンテナ効果により弱励起で触媒反応等を引き起こすための条件について知見が得られ始めた。 以上の目標達成度を総合的に評価して、概ね研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究については、主に以下の目標が掲げられる。[1]23年度、光合成アンテナ系のLH2分子、及び反応中心系の LH1の配置制御により、広い範囲でエネルギー凝集が起こり得るかを検討することを目標とし、多くの知見を得たが、緩和の非マルコフ性の効果や反応中心であるLH1が混在する系でのエネルギー移動効率に対する各種パラメーターの依存性について調べる課題が残された。24年度はこの点についてさらに集中的に研究を進める。具体的には、これまでの手法を、緩和の非マルコフ性を取り入れることが出来る手法へと拡張し、特に取り扱うべき自由度が拡大することによる数値的計算の負荷を如何に下げるかについて、効率的な方法を模索する。[2] 24年度は、LH2そのものや、或いは分子(量子ドット)による人工システムにより、散逸を抑えた超高効率エネルギー捕集が可能である場合に、反応中心の代わりに光触媒量子ドットなどが配置された時の励起効率を計算する予定であるが、23年度既に金属ナノギャップを有したアンテナ系と分子の組み合わせにおいて、分子を3準位とした場合に高い励起効率が得られることを明らかにした。24年度は、この現象において、アンテナ系の構造や配置、分子の配置、配向などの制御によってこれが原理的にどの程度まで高められるかを明らかにする。[3]光合成系において明らかにしてきた高効率エネルギー移動に対する条件に関しての知見と、[2]で明らかにする超エネルギー凝集による分子の高効率励起機構の知見を総合し、より広い範囲でエネルギー捕集を高効率に行え、これが次世代触媒反応系や、以上発光現象に結びつく人工システムの提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費は以下の項目を予定している。旅費:4月台湾で開催の研究会に申請者と当該研究に携わる学生を1名派遣する。また秋、春の物理学会において、研究発表を予定しているが、その旅費を計上する。人件費、謝金:当該研究に携わる博士課程学生に対し、研究補助者として1年間謝金を計上する。また事務支援5ヶ月を計上している。物品費:23年度は予定していた他テーマの研究予定変更により計算サーバー使用時間の振替で本研究テーマへの対応が出来たが、24年度現有では不足するので、追加CPUユニットを導入する予定である。
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Research Products
(20 results)