2012 Fiscal Year Research-status Report
超分子複合体における分子認識と光励起キャリアダイナミクスの解明
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23654106
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
江馬 一弘 上智大学, 理工学部, 教授 (40194021)
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Keywords | 超分子 / 蛍光プローブ / ナノ光物性 |
Research Abstract |
本研究では、超分子化学と超高速領域の光物性研究を融合させ、シクロデキストリン複合体(CD複合体)という魅力ある分子を、ナノ構造の光物性の舞台に引き出すことを目指している。具体的には、CD複合体が糖と結合したときの発光の振る舞いを光物性の立場から研究し、CD複合体の発光・消光のメカニズムと、光励起キャリアのダイナミクスを解明する。その過程において、CD複合体のナノ構造としての特徴を抽出し、光物性の分野で活躍させる基礎を築く。本研究の成果は、分子識別の分野、および、生体内反応を研究する分野へ多大な貢献を与えるものと予想される。 以上を研究目的として,本年度は以下の項目を実施した. 1.ボロン酸型蛍光プローブ単体の基礎光学スペクトルを測定し、溶媒依存性などを調べた.CD複合体の研究を行っていたが,蛍光プローブ単体の特性の理解が不十分だと認識し,単体に対して、吸収スペクトル、発光スペクトル、励起スペクトルなどの基礎光学スペクトルの測定を行った。水溶液のpHを変化させた測定、有機溶媒と水の比率を変えた測定など通して、単体での電子移動または励起エネルギー移動の特徴を理解した. 2.蛍光プローブの構造を系統的に変えたCD複合体の分子設計 蛍光プローブのフェニルボロン酸とピレン蛍光団の距離と角度を系統的に変化させたCD複合体を設計する。アルキル鎖の長さを変えることで、フェニルボロン酸とピレン蛍光団の距離を調整することができる。また、ピレンに置換する位置を変えることで、フェニルボロン酸とピレン蛍光団の角度を変えることができる。これにより、光励起したときの遷移の双極子モーメントの向きを制御することができた。 3.量子化学計算による,電子状態の解明.量子化学計算を駆使して,CDの励起状態の電子状態を解明した.電子移動が可能か,それともエネルギー移動のみかを決定するための研究であり,現在進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CDの役割,および蛍光プローブ単体での特性は概ね理解が完了している.ただ,蛍光が消光するメカニズムが,電子移動かエネルギー移動かについては,まだ未解決である.
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Strategy for Future Research Activity |
未解決である,消光のメカニズムを残りの期間(一年延長した期間)で解明することを目指す.実験は一通り済んでいるが,取り切れていない部分を確実にデータ取得し,最終年度は,主にデータ解析と,メカニズム解明を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大型の実験装置は既設または購入済みなので,残りの予算では,試料作成のための消耗品と,光学部品を購入する予定である.
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Research Products
(5 results)