2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654111
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 単分子 / 電子スピン共鳴 / グラフェン / スピン操作 / コヒーレンス |
Research Abstract |
研究実績23年度は、電子スピン共鳴の実施のために、要素技術の開発に取り組んだ。 具体的には、高感度に検出するために不可欠な周波数安定化したサブミリ波発振器の調整、出力のデバイスへの伝送のための導波回路の設計と試作、デバイスと結合するためのアンテナの構造の検討などを行った。このなかで、出力の安定化のために、電源周りの強化が必要なことが判明し、フィルターやシールドなどの工夫を行い、安定度を向上させることに目処をつけた。また、結合回路では、ループの大きさや、デバイスとの相互関係などを検討して、デバイス上で電磁波が出来るだけ集中するような配置を工夫した。さらに、最適な周波数を決定するために、試作を行い、周波数に対する結合度、電磁波の集中などの効果を検討して、光源の強度の周波数依存性とあわせて、最適な周波数帯を評価することが出来た。これらを通して、安定して電磁波を結合できる入力系に関してはある程度目処がたった。 開発の第2点として、グラフェンデバイスの加工方法やサイズの検討も行った。この中では、原料となるシートの作成法として、物理的手法に加えて、化学的手法を検討し、その際に残留物等が問題になるかを検討した。分子を乗せてから、処理をするために、電極の素材などの検討も行い、これらの検討から、有用な構造とサイズの設計を進めることが出来た。 さらに、デバイスと分子の結合を検討するために、これまで進めて来たバルクのπ―d系やSi系における結合性との比較検討を行うための予備実験や計測を行い、望ましい結合の仕方を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の最終計画を100とすれば、現状の達成度は40程度である。達成度が半分に至らないのは、今年度は主に予備実験や検討を行っており、実際のデバイスを利用した条件だしが開始していないため、まだ最適な方法に関しては、不確定な要素が多いためである。しかしながら、本研究課題の性格からすれば、これらの過程は不可欠なものであり、予定としては順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、実際のシステムの作製などを課題申請時の計画にそって進める予定であり、特に大きな変更は予定していない。用いる分子系に関しては、最近ラジカルを含む新物質の開発で進展があったので、それらを取り入れることで、より効率的に研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目は、まず1年目の検討に基づいて、デバイスの作成を進める。そのために必要な顕微鏡、リソグラフィー装置等は現有設備と学内の共同利用設備を利用する。分光器に関しては、23年度の基盤的経費で整備したものを用いる。試験測定の対象としては、希土類-フタロシアニン分子および、3d-ラジカル系のヘテロスピン系を用いる。前者は平面型構造をしており薄膜面に載せるのに適している。後者は、化学修飾により、デバイスとの結合を強く出来る可能性がある。 デバイス構造としては、ホール素子型のデバイスとストリップライン型のデバイスを作成し、後者では、導波路に分子を置くことで、感度を向上できることを試みる。 電子スピン共鳴では、電磁波の結合を高めるために、23年度に検討した各種の結合回路を実験で比較検討して、最適なものを選択する。 計測面では、ピコアンプメータ等は既存のものを用いる。また光源に関しては、昨年度改良済みで有り、必要に応じて、周波数安定化のための温度環境の制御などの改善を施す。さらに最適化したデバイスに対して電磁マニュピレータ等の付加を行い、分子の制御の可能性を検証する。酸化還元による磁気状態の制御と結合性の制御も検討する。 これらの目的のためのデバイス作製のための材料や部品等を消耗品として購入する。またGunn発振器等の部品を購入する。試料料提供者との打ち合わせ、学会での成果発表等のために旅費を用いる。謝金は歩留まりの限られるデバイス作製の一部を学生補助して貰うために用いる。その他は論文投稿料に用いる。
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