2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23654111
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
|
Keywords | 電子スピン共鳴 / グラフェン / スピン操作 / コヒーレンス / 単分子 |
Research Abstract |
本研究はグラフェンに代表されるコヒーレントな2次元電子系と分子スピンの結合を利用した新しいESR実験手法を開発することを目的としている。本年度は、このために、単分子磁石の吸着の方法の検討をまず行った。物質としては、TbおよびDy-Pc系をもちいて、希釈溶液を基板上に滴下して、乾燥により適度な分散を得る事を試みた。分子の配向に関して、評価するために別途滴下により析出した試料の磁化測定により、配向がなされていることを確認した。薄膜に関しては、光反射率の測定より、吸着状態の評価を試みたが、十分な変化が計測出来ず、評価に関して課題を残した。次に、グラフェンへとの結合系のために、空洞共振器や伝送系を作成し、既知物質を用いて感度やモードのチェックを行い、正常に動作することを確認した。さらに感度向上のためのガン発振器を導入し、装置への組み込みを行った。最高周波数で360GHzまでの周波数をカバーすることが可能になり、これを用いて表面での電磁場を増大する開発を行った。空洞共振器では十分な強度が得られなかったため、平行線路を試み、一定の強度の増強を確認したが、安定度が悪く、測定に困難が生じたため、周波数の微調整機構が必要なことが判明した。磁気抵抗に関しては、低温測定が寒剤の供給不足により、年度後半において実験時間が不足したため、十分な信号強度が得られず、状況の改善をまって再検証が必要である。この原因としては、熱ノイズの他、単分子磁石の磁気偏極が1%以下しか得られないことが考えられる。その他、π-d系等において、バルクではあるがコヒーレントな電子系の伝導とESRに関して研究し、共鳴による抵抗変化を見いだした。これらの研究を通して、コヒーレントな2次元電子系と分子スピンの結合利用したESR手法の開発に関して、技術面の検証に向けた進展が得られた。
|