2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654113
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳原 英人 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50302386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長浜 太郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20357651)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 磁気光学効果 / スピンホール / 回折 |
Research Abstract |
この研究では、スピンホール効果に伴うスピン蓄積を観測するため、回折格子に電流を流しその回折光の磁気光学効果(MOKE)を測定することを目指している。当該年度は、(1)磁気光学回折計の作製、(2)光学系・計測系の構築、(3)スピンホール効果の大きな物質を用いた高精度な回折格子の作製を行った。まず現有の粉末X線回折計の改造をおこない磁気光学効果測定専用の回折計を作製した。θ軸、2θ軸の制御系を一新しパルスモータ駆動に変更し、さらに光軸調整を容易に行うために光源及び試料部にゴニオメータなどのアライメント機構を追加する改造を実施した。光学系は、光源に波長405 nm、出力400 mWの半導体レーザを用い、入射側に光弾性変調器(PEM)を配置した。受光素子にはSiフォトダイオードを用いた。PEMにより偏光変調(f1)をかけると同時に、回折格子に交流電流(f2)を印加することで、スピンホール電流に伴う磁気光学効果のみを検出することを試みた。f1+f2の和周波を参照信号としてロックイン検波を可能とする計測系を構築した。また回折格子にはスピンホール効果が大きいことで知られているPtを用いた。厚さ50 nmのPt薄膜ををリフトオフすることで、それぞれ500本の細線からなる回折格子を8種類(線幅が300 ~ 900 nm)作製した。作製した回折計の角度分解能を評価するため市販の回折格子を用いて評価した。また光学系・計測系共に計画通りのものが完成した。Pt回折格子については、その作製条件等も最適化できた。予備的な測定では、S/Nが低くスピンホール効果に伴うスピン蓄積に起因した有意な信号は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標のMOKE信号はまだ得られていないものの、回折計および計測系が完成した。また回折格子の作製条件もよく詰められており、24年度は逐次フィードバックを掛けて改良を行うことで効率良く測定系全体を最適化できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
回折格子に流す電流密度を上げることで信号強度が大きくなることが期待できる。細線がジュール熱で断線しない範囲で最大限電流を流す必要がある。また、回折格子自体が偏光素子として機能するため、MOKE信号を得るために最適な光学素子の配置を最検討する必要がある。当該年度に測定装置の大枠は完成しており、今後は頻繁にフィードバックをかけて測定系を更新することで最適化が可能となり目標達成につながるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に残額が発生した理由は、学内での競争的研究資金を獲得したことにより実験設備を購入し、研究実施することができたことと、当初予定していた製品よりも高性能で低価格の研究機器が入手できたためである。次年度はこれらの研究費を24年度分の研究費とあわせて光学素子と必要であれば電源の購入に充当したいと計画している。電源容量に関する定格は現在調査中である。このほか得られた成果を発表するための旅費等に使用する予定である。
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