2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロニウムをプローブとする局所磁場測定法の開発
Project/Area Number |
23654114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 晴雄 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60235059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 憲悟 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20415425)
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Keywords | 陽電子 / ポジトロニウム / 消滅γ線 / PsSR / 局所磁場測定 / LaBr3(Ce)シンチレータ結晶 / デジタルオシロスコープ |
Research Abstract |
ポジトロニウムスピン回転(PsSR)はポジトロニウムが磁場中で歳差運動する現象であり、ポジトロニウムが三光子消滅する際に放出されるγ線の方位分布も回転するため、固定したγ線検出器では消滅放射線の計数率の振動が観測される。この振動の周波数は磁場強度に依存するため、逆に振動数から磁場強度を求めることができる。本研究は、PsSRを利用した物質中における局所磁場強度測定の可能性を検証する。 これまで、PsSRは真空中では観測されているが、物質中で観測されていない。物質中ではポジトロニウムの寿命が短いため、高度な計測技術を要する。また、物質中ではPsSR信号が打ち消される可能性もある。 本年度(最終年度)は昨年度開発したPsSR測定装置を改良した。この装置の要点は、①時間分解能とエネルギー分解能が共に優れているLaBr3(Ce)シンチレータ結晶をγ線検出に用いることと、②その検出器からの出力信号をデジタルオシロスコープで記録し波形信号を後処理で解析することである。また波形処理ソフトを開発しデータ解析法の最適化を行った。 まず、装置のテストとして窒素雰囲気下で外部から1.0kGの磁場を印加し、測定データを解析したところ、寿命値132ns、振動周期26nsのPsSR信号が観測された。次に、凝集系におけるPsSR信号の観測を目指し、ヘキサン中で外部から2.0kGの磁場を印加した。ヘキサン中のポジトロニウムの寿命値は約4nsと知られており、これは凝集系としては比較的長いのでPsSR信号の観測に適している。データを解析したところ、有意な計数率の増減が確認され、ピークとバレーの間隔は約5nsであった。これは期待されるPsSR信号の一部分と考えられる。このことから、凝集系でもPsSR信号が観測可能であることが明らかとなった。
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Research Products
(7 results)