2011 Fiscal Year Research-status Report
微細加工技術を用いた高周波超音波デバイスの開発による散逸量子系の研究
Project/Area Number |
23654116
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
根本 祐一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10303174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤津 光洋 新潟大学, 自然科学研究科, 博士研究員 (10431876)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 強相関 |
Research Abstract |
超音波計測法では,LiNbO3や水晶などの単結晶圧電素子を40ミクロンから200ミクロンの厚さに薄く成形し,それを試料表面に接着して超音波の発振および受信に使用し,試料中を伝搬する音速を精密測定することで,物質特有の物理量である弾性定数の低温ソフト化やその磁場依存性を観測する。本研究ではこれまでの40ミクロン厚の超音波デバイス開発の経験を活かし,機械研磨の限界を超える微細加工技術を駆使し,チップ強度を維持しながら水晶,LiNbO3を局所的に極薄化する逆メサ構造に成形し,量子力学の選択則に必要不可欠な横波超音波をGHzで基本波発振する高周波超音波デバイス開発を目指すチャレンジングな課題に取り組んでいる。23年度はまず,ドライエッチングの手法が確立している水晶を用いて逆メサ構造のデバイス作製を行い,超音波実験に導入することに成功した。厚さは5ミクロンで厚み振動の基本発振周波数は約300MHzだが,試料に接着したときの素子への負荷が大きく,厚み振動よりも低周波発振することが分かった。また,温度変化に比較的安定なATカット水晶での試作であったため,温度に対する安定度は劣るものの純粋な横波超音波を発振できるACカット水晶の素子を外注した。一方,水晶をエッチングできるガスでは低温実験に最適な電気機械結合定数が大きい材料であるLiNbO3をほとんどエッチングできないことも確かめた。今後は特殊ガスによるLiNbO3のドライエッチングによる研削を試みる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はドライエッチングが容易な水晶での超音波デバイス試作に成功し,実験レベルでの超音波を発振することに成功した。一方で電気機械結合定数が大きいため,低入力パワーでも発振できる低温実験に最適なLiNbO3では,同様のガスではほとんどエッチングできないことも確かめた。このようにデバイス作製についておおむね計画通りに順調に進展している。これを踏まえ,24年度はLiNbO3をエッチングできる特殊なガスを用いてデバイス作製を試み,将来的に研究室内製での超音波デバイスが作製できるためのノウハウを収集する。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は純粋な横波超音波を発振できるACカットの水晶を用いてデバイス作製を行い,発振を確認した後,超音波実験に導入する。また,LiNbO3をエッチングできるガスを用いて研削を試みる。まず2インチウェハを用いてエッチングが十分に可能なことを確かめ,条件を最適化したうえで逆メサ構造の超音波デバイスの作製を行う。厚み振動と実際の発振周波数とを比較し,低温実験に最適なLiNbO3でのデバイス作製と超音波実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超音波素子のドライエッチング成形のための外注費および低温実験に使用する液体ヘリウム寒剤,企業との打合せ旅費を計上した。
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