2011 Fiscal Year Research-status Report
共鳴電子線散乱法の開発およびマンガン系ペロブスカイト酸化物の軌道秩序解析への応用
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23654117
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 晃 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (50292280)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 電子線非弾性散乱 / 軌道秩序 |
Research Abstract |
本研究課題は、電子線の内殻励起非弾性散乱をもちいて種々の強相関電子系物質におけるd電子軌道の配向秩序を解析する新しい手法(共鳴電子線散乱法)を開発し、高温超伝導や巨大磁気抵抗効果など種々の興味深い物性を示すマンガン系ペロブスカイト酸化物の電荷・軌道秩序状態におけるd電子軌道の配向秩序をナノメーターオーダーの空間分解能で決定しようとするものである。当該年度は以下の点について研究をすすめた。(1)電子線エネルギーフィルター制御システムの導入および装置の調整の最適化:当初、エネルギーフィルター制御システムの導入を予定していたが、既に搭載している電子顕微鏡装置が利用可能となったため、当該年度はこの装置を調整して非弾性散乱実験を行うこととした。(2)理論計算および解析プログラムの開発:非弾性散乱の異方性を定量的に解析するためのGUIを備えたプログラムを開発した。(3)(La0.5Sr1.5)MnO4の共鳴電子線散乱および収束電子回折実験および軌道秩序解析:当初予定していた(La0.5Sr1.5)MnO4の軌道秩序解析を行う前に、既に試料作製まで完了しているNd0.5Sr0.5MnO3の実験を行うことにした。この試料は150K以下でCE型の軌道秩序を形成することが報告されている。非弾性散乱図形を撮影したところ、CE型とは符合する非弾性散乱異方性を示す試料片に併せて、CE型とは矛盾する異方性を示す試料片も存在した。収束電子回折法でまず室温での空間群を確認してみたところ、これまで報告と異なる空間群に属する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定と異なる試料であるが、電子顕微鏡およびエネルギーフィルター装置の調整を最適化することにより、最も大きな懸案事項であったMnのL殻励起非弾性散乱(エネルギー損失ΔE=630eV)をエネルギースリット幅1eV程度で取得し、その異方性を定量的に評価できることが確認できた。当初予定していた試料は観察できなかったが、当該年度にもちいた試料は次年度観察する予定の試料であり、研究計画に支障をきたすものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、当該年度で確立した計測法を種々のMn系ペロブスカイト試料に適用し、軌道秩序の組成依存性や温度依存性について解析をすすめていく。まず、当該年度に見出したNd系の空間群の矛盾について早急に解決し、低温での空間群決定および軌道秩序解析を行う。次に、室温で軌道秩序を形成することが報告されているSm系の実験を行う。さらに、最も多くの研究がなされているLa系について軌道秩序解析を行い、これまでのX線共鳴非弾性散乱の結果と比較する。当該年度使用していた装置はエネルギーフィルターの制御に優れているものの試料傾斜機構に問題があり、結晶の方位出しが困難であった。次年度は2軸試料傾斜機構を備えた電子顕微鏡装置にエネルギーフィルター制御システムを導入し、この問題の解決を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に導入しなかった電子線エネルギーフィルター制御システムを導入する。
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Research Products
(3 results)