2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23654120
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中井 祐介 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90596842)
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Keywords | 核磁気共鳴 / 一軸性圧力 / 鉄系超伝導 |
Research Abstract |
異方的構造をもつ物質の新奇物性の解明には、相互作用を異方的に変化させる一軸性圧力実験が有用であると期待できる。本研究目的は、一軸性圧力による異方的相互作用の変化を反映する磁気ゆらぎを測定できる一軸性圧力下核磁気共鳴測定技術を開発し、化学的圧力を変化させた系である鉄系超伝導体BaFe2(As1-xPx)2に適用することである。 作製した加圧器を用いてBaFe2(As1-xPx)2微小単結晶に対する一軸性圧力印加を幾通りかの方法で試したが、試料破損を伴わずに一軸性圧力を印加するのが困難であることがわかったため鉄系超伝導体に対して一軸性圧力下NMR技術を適用することは現状できていないが、劈開しにくい試料を選ぶなどして本研究の実験環境を活かしたい。 一軸性圧力実験と比較する上で重要となる、常圧および静水圧力下P-NMR測定をBaFe2(As1-xPx)2に対して行った。その結果、磁性相と超伝導相の境界領域のx=0.25と静水圧力約2GPaを加えたx=0.20について核スピン-格子緩和時間測定から、磁気秩序相が低温で超伝導転移し、磁性と超伝導の微視的な共存状態になることを明らかにした。また、P-NMRスペクトルの温度変化から磁気秩序温度以下で発達した磁気モーメントが、超伝導転移温度以下で抑制される振る舞いも見られた。これは磁性と超伝導が空間的に共存しながらも秩序変数同士が競合関係にあることを示しており、鉄系超伝導の対形成機構に理論的制約を課す重要な結果である。また、P濃度を通じて化学的圧力を変化させた反強磁性秩序状態でのNMR測定から、P濃度増加に伴い反強磁性モーメントがx=0.35に向けて二次転移的にゼロになっていくことを明らかにした。これはx=0.35が量子臨界点であることを直接的に示す結果である。
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Research Products
(5 results)