2011 Fiscal Year Research-status Report
量子ビームを用いた隠れた空間・時間反転対称性の破れの直接観測手法の確立
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23654126
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
久保田 正人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10370074)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 積層構造 |
Research Abstract |
三角格子面が積層した結晶構造を持つ鉄酸化物のユニットセル内には、2枚の鉄イオン三角格子面を1組としたW-layerがc軸方向に3組存在している。三角格子面には、Fe2+とFe3+サイトが存在し、Fe2+サイトには、軌道の自由度が存在している。しかも、低温では鉄スピンが秩序化し、マルチフェロイック的な振る舞いを示すといった多彩な電子自由度が内在している。Fe2+サイトとFe3+サイトは、隣接することがエネルギー的に安定であり、電荷秩序が出現する。従来のイオン変位型強誘電体の発現機構と異なり、W-layer内にFe2+とFe3+の電荷秩序状態が電気分極を発現し、新規な電子強誘電体として振舞っていることが示唆されている。 今回、電荷秩序における空間相関を明らかにするために、量子ビーム実験を行なった。実験には、フローティーングゾーン法で作製した鉄酸化物単結晶を用いた。鉄元素のK吸収端近傍のエネルギーを用いて、3倍周期の電荷秩序に伴うサテライトピークのプロファイル測定を行った結果、積層方向には反強的な相関が存在し、3次元的な電荷秩序が発達していることが確認された。これに対して、面内方向でサテライトピークのインコメンシュラビリティーの変化が観測された。また、積層方向の反強的な相関が弱まり、2次元的な相関に変化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災が生じたために、研究を遂行する際に用いる実験装置の一部や関連部品を改良して、研究を遂行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた以外の測定手法についても、物性を捉えるため有用な観測手段の検討も随時行いつつ、研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置の一部や関連部品の改良を図る。また、研究を総括するために必要な物品の購入を行う予定である。
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