2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームを用いた隠れた空間・時間反転対称性の破れの直接観測手法の確立
Project/Area Number |
23654126
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
久保田 正人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10370074)
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Keywords | 超格子 |
Research Abstract |
人工超格子薄膜においては、電子状態が2次元的閉じ込め効果により、バルク材料における時間反転対称性の破れ方とは異なる可能性がある。今回、薄膜における局所的な時間反転対称性の破れに関する情報を捉えるために、酸化物ナノ磁性材料の一つであるLaMnO3とSrMnO3の超格子薄膜を用いて、量子ビーム実験を行った。(LaMnO3) m /(SrMnO3) nでは、積層枚数(m,n)により、多彩な磁気相図を示す。特徴として、m=nにおいて強磁性絶縁体状態であることやm=n=2の超格子薄膜において、低温で巨大な磁気抵抗効果を示すことが挙げられる。これらの振る舞いを理解する上で、薄膜内の界面における磁性の理解が重要である。超格子薄膜の界面付近における磁性を明らかにするためには、特に、軟X線を用いた測定は有用な点が多い。MnのL吸収端近傍での2p->3d遷移による軟X線を用いた実験では、機能を発現するMnの電子状態を直接的に捉えられることや、磁気散乱強度も100-1000倍強度が大きく、界面における磁性材料研究に適している。 積層枚数が(m,n)=(5,5)である超格子薄膜を用いた、共鳴軟X線散乱による実験を行った。[(LaMnO3) 5/SrMnO3) 5]をユニットセルとした場合、散乱ベクトルQ=(0 0 L)付近の超格子反射は、マンガンのLII, LIII吸収端近傍で特徴的なスペクトルを示した。L=1付近では、超格子反射強度は、Tc~160K付近でシグナルが出現し、温度降下と共に、強度が増加していく振る舞いを示した。一方、L=2付近のシグナルは、顕著な温度変化を示さなかった。これらは、観測したシグナルが超格子薄膜における強磁性シグナルであることを意味している。 モデル計算とエネルギースペクトルのQ依存性を比較することにより、強磁性が主に、LaMnO3層側で生じている事が明らかになった。
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