2012 Fiscal Year Annual Research Report
四極子散乱の選択的計測により価電子密度分布を可視化
Project/Area Number |
23654127
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大隅 寛幸 独立行政法人理化学研究所, 高田構造科学研究室, 専任研究員 (90360825)
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Keywords | X線回折 / 偏光依存性 / 消衰効果 / 多波回折 / 電荷整列 / 軌道整列 |
Research Abstract |
本研究は、価電子からの散乱を選択的に計測するX線回折の新たな手法の開発を目的として行われた。特に、価電子からの散乱の選択的計測の実現に必要な偏光制御装置・計測システム・測定手法の開発を、放射光ビームラインにおいて行った。昨年度、マンガン酸化物の軌道整列相において、温度依存性が秩序変数と対応する超格子反射が非共鳴条件においても観測されることを見出し、その偏光依存性が通常のトムソン散乱では説明できないことを明らかにした。この偏光依存性の異常は、四極子散乱によっても消衰効果によっても説明し得ることから、両者を判別するために、今年度は、超格子反射強度の結晶方位角依存性を詳細に調べた。その結果、レニンガー効果と同様の結晶方位角依存性を示すことが明らかになった。これによって、消衰効果の可能性は否定され、この超格子反射がMn3+イオンのe_g電子の交替的軌道整列を四極子散乱によって選択的に観測していることが確認された。また、シリコン単結晶において見出された偏光依存性の異常についても、反射強度の結晶方位角依存性の測定を行い、その起源について実験的検証を試みた。その結果、トムソン散乱と同様に等方的であることが確認され、偏光依存性の異常が消衰効果に起因していることが明らかになった。偏光依存性の異常の程度から評価した消衰効果の大きさは、Becker & Coppensの方法から予想される値と定性的に一致することも確認された。
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