2011 Fiscal Year Research-status Report
非平衡系における新しい操作的変分原理の構築とその応用
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23654130
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々 真一 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30235238)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 非平衡 / ゆらぎ / 統計物理 |
Research Abstract |
カレントの時間平均のキュミュラント母関数についての、操作的変分原理の基本的骨格を構築した。特に、マルコフジャンププロセスにおいて汎用的に成立する公式を見出した。この公式では、ポテンシャルを余分に加えた系のアクティビティーともとのアクティビティーの差を最大化するようにポテンシャルを調整することで、カレントの時間平均に重みをかけたバイアスアンサンブルを作ることができ、その結果として母関数を求めることができる。ここで重要なことは、この変分原理では、変分パラメータが、加えるポテンシャルとして表現されており、原理的には実験で実現可能な形になっている。 また、この綺麗な結果は、目標に掲げた、大偏差関数についてのドンスカー=バラダン理論との関係を考える上でもきわめて重要な役割を果たした。実際、ドンスカー=バラダンと理論との関係は直接的になり、例えば、ドンスカー=バラダン理論にもとづいて我々の変分原理が導出できるようにもなった。 さらには、離散時間マルコフ鎖においても、同様な公式を導出することができた。ランジュバン系も含めて、形式的な面については、ほぼ完全な理解を得たといってよいだろう。 さらに、この公式の意義について考察し、より大きな問題の中に位置づけられつつある。以上の成果の一部は、Phys. Rev. E に18ページの論文として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際会議で期待以上の有意義な議論などがあり、また、幸運も重なった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得た知見やそこで得た今後の展開を踏まえ、さらに進展する。特に、問題としてとりあげるのは、大自由度系への適用である。我々の公式は、原理的には、自由度に関係なく成立する。しかし、自由度に関して指数関数的に「操作するパラメータ」が増えてしまい、実用てきではない。ところで、いくつかの状況証拠から、広いクラスの系について、一体ポテンシャルの制御だけで変分関数を最適化できる可能性がある。この可能性を追求し、数理的な証明と数値実験での提示を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度からの少額の繰り越し分も含め、交付申請書に記したとおりに行う。昨年度の場合も、海外研究者との議論がきわめて有効であったので、引き続き交流を大事にしたい。
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Research Products
(4 results)