• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2011 Fiscal Year Research-status Report

リウビル演算子の固有値スペクトルに基づいた古典的非可積分力学系の分析

Research Project

Project/Area Number 23654136
Research InstitutionOsaka Prefecture University

Principal Investigator

野場 賢一  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30316012)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords国際研究者交流(米国) / 非可積分系 / リウビル演算子
Research Abstract

古典力学の少数自由度非可積分系の解析を、リウビル演算子の固有値問題という観点から行った。非可積分系の典型的な例の一つとして、太陽と小惑星と木星の制限3体問題を考える。太陽系の小惑星は火星と木星の間に数多く分布しているが、いくつかの特定の軌道半径(共鳴点)において小惑星がほとんど分布していない「カークウッドの隙間」が知られている。この小惑星の縞構造は木星の摂動によるもので、共鳴特異性の結果として現れる。本研究では、共鳴点における小惑星についてリウビル演算子の固有値問題を解析し、現時点で次のような結果を得ている。まずリウビル演算子の固有値を近似的に求めることにより、小惑星分布のギャップの大きさのオーダーの評価を行った。木星の楕円軌道を考慮した場合、フロケの定理を用いてギャップを解析的に評価できることを示した。この場合の固有値は擬振動数となり、擬振動数に現れるギャップが小惑星のギャップに対応する。ここで用いた近似においては、小惑星ギャップの起源は、量子力学における半導体中のバンドギャップが準位反発により生じることの類推として理解される。次に近似を上げて、共鳴点における小惑星について、リウビル演算子の固有関数を含めて固有値問題の解析を行った。その結果、求まった固有関数はその空間で完全直交系をなしており、対応する固有値は無限個存在することがわかった。一般化運動量についての無限個の縮退が摂動で解けることがその原因である。これにより古典系でのリウビル演算子の固有値スペクトルには、量子力学におけるバンドギャップよりもむしろ豊富な構造が内包されていることが明らかになってきた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当該年度においては古典的非可積分系の具体的な研究対象として、太陽・小惑星・木星からなる制限3体問題に焦点を絞り、小惑星の運動の生成演算子であるリウビル演算子の固有値問題について解析を行った。本研究は古典非可積分系をリウビル演算子の固有値問題として解析するという新しい試みであるため、一般的な解析の指針となるものがほとんど存在しない。そこで具体的な問題について近似を段階的に上げながら研究を進めていかなければならない。まず固有値のオーダーのみを評価する粗い近似を用いて解析を行った。この手法を用いて木星の楕円運動を考慮した場合について解析し、その結果を学会で発表した。次に近似の精度を上げて、一般化運動量についての微分演算子を適切に考慮した解析を行った。その結果、非摂動系でこの系の状態は無限に縮退しており、摂動によりその縮退が解けて、無限個の固有値が現れることがわかった。現段階では無限個の固有値の物理的意味は明らかでないが、本研究が新しい局面に入ったことは確かである。

Strategy for Future Research Activity

今後も当面は古典的非可積分系の典型的な例である太陽・小惑星・木星の3体問題について更に研究を進め、リウビル演算子の固有値問題の解である固有値、固有関数について詳細な解析を行っていく予定である。現時点ではおもに解析的な手法により研究を進めているが、今後は数値計算も同時に行い、解析計算で得られた結果の評価を行う。リウビル演算子の固有値問題による解析では分布関数という「状態」が時間発展をする。その分布関数の時間発展は、固有値・固有関数を用いて求めることができる。現在我々は、その固有値・固有関数の解析的な表現を近似的に求めているところである。一方、通常の古典力学の解析では物理量そのものが正準運動方程式にしたがって時間発展するが、一つの質点(小惑星)の軌跡を数値的に求めるのは比較的容易である。そこで軌跡の数値計算を行い、その統計的平均を求めて、分布関数の時間発展と比較をすることができる。この比較は我々の理論で行っている近似の妥当性を確認するために重要であり、また今後我々の理論を発展させるための指針としても重要なものとなり得る。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

本研究は研究代表者と米国在住の研究協力者の共同研究である。そのため電子メールで連絡を取り合うとともに、お互いを訪問して議論を重ねて研究を進めていくことが重要である。当初は当該年度に研究代表者が研究協力者を訪問する予定であったが、研究代表者の家庭の事情によりこれが次年度以降に延期になった。そのため本来当該年度に旅費として使用する予定であった研究費を次年度に繰り越した。次年度は研究代表者が米国を訪問し、また研究協力者も訪日する予定であるので、その旅費を支出する予定である。また本研究に関連する研究を行う研究者を招聘する予定があるので、その旅費および謝金を支出する予定である。次年度は従来行ってきた解析計算に加えて数値計算による研究も行う予定である。そのため数値計算に必要なコンピュータおよびソフトウエアを購入する予定である。また天体力学関係の書籍を購入する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All Other

All Presentation (3 results)

  • [Presentation] リウビル演算子のバンド・スペクトルとレベル反発から見た小惑星系の縞構造III:木星の離心率効果

    • Author(s)
      野場賢一,岸田一希,Tomio Yamakoshi Petrosky
    • Organizer
      2011年日本物理学会秋季大会
    • Place of Presentation
      富山大学
    • Year and Date
      平成23年9月22日
  • [Presentation] リウビル演算子のバンド・スペクトルとレベル反発から見た小惑星系の縞構造II:フロケの定理と擬振動数

    • Author(s)
      Tomio Yamakoshi Petrosky,野場賢一
    • Organizer
      2011年日本物理学会秋季大会
    • Place of Presentation
      富山大学
    • Year and Date
      平成23年9月22日
  • [Presentation] リウビル演算子のバンド・スペクトルから見た小惑星系の縞構造とトランジスタ内の電子の量子論的ハミルトニアンのバンド・スペクトル

    • Author(s)
      Tomio Petrosky(研究協力者と研究代表者の共同研究を研究協力者が発表)
    • Organizer
      天体力学N体力学研究会2011(招待講演)
    • Place of Presentation
      大阪大学基礎工学部
    • Year and Date
      平成23年9月1日

URL: 

Published: 2013-07-10  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi