2013 Fiscal Year Annual Research Report
リウビル演算子の固有値スペクトルに基づいた古典的非可積分力学系の分析
Project/Area Number |
23654136
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野場 賢一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30316012)
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Keywords | 国際研究者交流(米国) / 古典的リウビル演算子 |
Research Abstract |
古典力学の少数自由度非可積分系の典型的な例の一つである太陽・小惑星・木星の制限3体問題について、共鳴点における古典力学的状態に対する摂動の効果に着目し、古典的リウビル演算子の固有値問題という観点から解析を行った。 太陽系の火星と木星の軌道の間に数多く存在する小惑星の分布には、カークウッドの隙間として知られる、小惑星がほとんど存在しない領域がいくつかある。これらの領域は、木星と小惑星の公転周期の比が簡単な整数の比で表される長半径の位置に対応している。ここではその整数比が2:1となる共鳴点について、小惑星の運動に対する木星による摂動の効果について分析を行った。 太陽と小惑星の2体問題に対応する非摂動リウビル演算子の固有関数は、共鳴点において縮退している。木星による摂動の効果を調べるために、量子力学でよく知られている縮退がある場合の摂動論を援用する。具体的な摂動計算は、量子力学の場合と同様に摂動リウビル演算子の固有値問題に帰着するが、本研究の対象は古典系であるために、個々の行列要素は一般化運動量に関する微分演算子となっている。そのため、解くべき固有値問題は連立偏微分方程式となる。 研究の初期段階では、非摂動固有関数は3重に縮退していると仮定して、連立偏微分方程式の解を求めた。またその解を用いて、カークウッドの隙間が生成されるまでの時間スケールの評価を行った。 最終年度には、3重以上の多重縮退の効果を取り入れて固有値問題の解析を行い、多重縮退の場合の解を近似的に求める方法を考案した。その結果、3重縮退を仮定して求めた偏微分方程式の解が多重縮退の場合の近似解の一つになっていることを示した。 これらの研究成果は、古典系の共鳴点において解析的な表式を得たという点に特徴がある。これはリウビル演算子の固有値問題を扱い、古典的状態に着目することではじめて得られた結果といえる。
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Research Products
(1 results)